授業評価の結果をより良い学びに活かす~大学編

大学で実施される授業評価アンケートは、学生の学びの質を向上させるための重要な手段の一つです。しかし、アンケート結果が単に公表されるだけで、授業改善に繋がっていないケースも少なくないようです。授業評価が意味を持ち得るのは、単なる数値の比較に終わらず、教育の質向上に繋がってこそ。本稿では、評価結果が適切に活用されない理由から、その解釈や授業改善に向けて踏むべき手順まで考えてみます。 ❏ 授業評価が活か…

進路意識形成を支える指導

1 興味を追いかけ、しなやかに選択を重ねる 1.1 キャリアは選ぶものではなく重ねるもの ★ ・最短の進路がベストにあらず1.2 進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか ★1.3 自分事としての目標か~達成への行動を考える前に New!1.4 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり1.5 カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ1.6 ゴールを決めて最短距離?(全3編)…

モチベーション理論を授業にどう活かす?

たまたまですが、去年あたりから、学習意欲の向上を図るのに有効な指導法はないかといったご相談を受けることが続きました。改めて問われると不勉強を自覚せざるを得ず、もう一度勉強を始めたところです。あくまでも「勉強の途上における、自分向けのメモ程度のもの」として、温かい目でお付き合いをいただければ幸甚に存じます。 ❏ まずは、広く知られた「モチベーション理論」を概観 代表的な「モチベーション理論」と言えば…

教科学習指導の土台はホームルーム経営

授業評価における「この授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感するか」という質問には、全生徒にYESで答えてもらいたいものです。授業評価の結果は、教科担当の先生方の指導技術(伝達スキルと授業デザイン)に大きく左右されます。しかし、それだけではありません。ホームルームが「生徒が互いに刺激し、共に成長できる、学びにふさわしいコミュニティ」になっているかどうかも、大きな影響を与えます。本稿では、データの…

アンケートの結果に照らしながら、指導の改善を図る

生徒が経験してきた学習活動/学習履歴は、個人でも集団でも、それぞれ異なります。学習履歴の違いは説明や指示の受け止め方などにも違いを生むため、同じ指導を行っても、各々の反応が異なるのは当然です。どんな反応が返ってくるのか予想しきれない以上、生徒の反応を、精緻な観察とアンケートの結果なども参考にしっかり捉えながら、指導計画の修正を重ねなければ、学びを意図した方向に導くことはできません。 2014/10…

メッセージは意図通りに伝わっているか

指導の中で大切なことを伝えたのに、思うような反応や言動が見て取れず、本当に伝わったのか不安になることはないでしょうか。なぜそれが大切なのか理由まで掘り下げて説明したのに、ピンときていない様子を見ると、もどかしく感じますが、手をこまねくわけにはいきません。まずは、伝えた内容を生徒がどう受け止めているかを確かめましょう。方法には「生徒に考えていることを言語化させる」「指導後の生徒の言動に、期待した変化…

AIで深める自己理解~志望理由書作成での活用例

教育現場に限らず、AIを活用するのはもはや「日常」でしょう。仕事の相棒として欠かせない存在という先生方も多いかと思います。過日の拙稿「次期学習指導要領に向けて~教育へのAI利活用」でも触れましたが、教育現場での活用シーンはこれからもどんどん増えそうです。教科学習指導以外にも、「個別化」が必要な場面では、AIの積極的な活用を進めたいところ。進路指導の場でもAIを活用するケースが増えているようです。特…

教育手法開発・指導法改善に向けた計画作りは万全?

新年度からの生活・学習・進路の指導計画は順調に固まりつつあると思いますが、もう一つ計画を起こしておきたいのは、「教育活動の成果をどう測りつつ、教育手法の開発や指導法の改善を進めていくか」です。新しい学力観の下、様々な取り組みが積み重ねられている中、万が一にも「やりっぱなし」の部分があっては、徒な試行錯誤に生徒を巻き込むばかりですし、先生方にとっても、投じたエネルギーに見合った効果が実感として得られ…

進路指導で育む“選択の力”(後編)

進路指導の現場では、生徒に個々の資質や志向に合致した進路を見つけさせ、その実現を後押しするのが第一義ですが、同時に「選択の力」を獲得させることにも注力すべきというのが前編の趣旨でした。進路選択までに踏まえるべきプロセスの一つひとつは、「より良く生きる(=正しい選択を重ねる)ための力」を得る学習機会でもあります。後編では、進路指導を通じてどんな資質や姿勢、スキルを身につけさせるか、それらは教科学習や…

進路指導で育む“選択の力”(前編)

進路指導の目的の一つは、生徒がそれぞれの能力や志向に合った進路を見つけ、実現することです。しかしながら、この目的を達成する過程で生徒が身につけるべき様々な資質や姿勢のことも忘れてはいけません。中でも、進路を選択するプロセスの中で養われる「選択の力」は生徒が人生を歩む上でとりわけ大切。進路指導はその力を育む重要な場です。 2014/12/29 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 高校卒業の時点…

明日と明後日、ブログの更新をお休みします

いつも当ブログをお読みいただき、誠に有難うございます。急ですが、明日と明後日(20日、21日)のブログ、更新をお休みします。休止中も、ブログやホームページはいつも通りに御覧をいただけます。更新再開は週明けの予定です。引き続きよろしくお願いいたします。立春から2週間以上が経過しましたが、相変わらずの寒さです。ご多忙の日々と存じますが、くれぐれもご自愛ください。 近所の公園の梅です。撮影は10日ほど前…

準備が整わないうちに選択を迫っていないか

進路形成は大小様々な選択の積み重ねであり、ある局面の選択によってその先に見える景色が違ってきます。もちろん、選択のやり直しはいつでも可能ですが、ある分岐点を右に曲がった場合、左に折れたら見えたはずの光景(≒興味や関心)に出会うチャンスは小さくなります。どちらの道に進むかは、できる限りの情報を集め、吟味し、それぞれの道の先に広がる世界を想像してから決めたいもの。生徒を選択の機会に臨ませるとき、拙速な…

大きな分岐に臨ませるまでに行うべき指導

進路を決定するまでのプロセスにおいて、生徒は小さいものから大きなものまで多くの選択を経ながら自分の未来を拓いていくもの。ある場面でおこなった選択は、その後の選択肢の構成を変えてしまいます。選択を間違えたとしても、方向転換や多少の後戻りで正しいルートに戻ることは可能ですが、それには多大なエネルギーが必要となります。時間も巻き戻しはできませんので、「進路決定までのタイムリミット」を超えるリスクのある歩…

先に控える選択の機会をいつ認識させるか

進路指導計画を作るときも、それに基づいて実際の指導を進めていくときも、「先に控える選択の機会」をどのタイミングで生徒に認識させるかは、様々なことを想定して決めていくべき重要事項です。タイミングが早すぎると、今やるべきことに集中できなくなり、その中で得られるはずの成果を逃してしまうリスクを抱えますし、逆に遅すぎれば、準備を十分に整えないまま選択に臨ませてしまい、「とりあえずの選択」でその先の可能性を…

ホームルームの年間実施計画

新学期に向けて、各教科の年間指導計画は完成に近づいていることと拝察いたしますが、各学年におけるロングホームルームの年間実施計画の作成は進んでいるでしょうか。年間で30回ほどの貴重な指導機会に、生活、学習、進路の各領域の到達目標を達成するための活動を余さずに配置するには、実施計画を十分に練る必要があります。活動の一つひとつに優先順位をつけて、限られた指導機会という枠に落とし込んでいこうとする中で、こ…

指導の成果を確かなものに~新入生を迎えるとき

指導計画が設計通りの性能を発揮するには、まず第一に「計画自体が合理的で実行可能であること」、その上で「実際に現場でご指導に当たる先生方が必要な知識とスキルを備えていること」が大前提です。これに加えて、指導対象の生徒が持つ学びのレディネス((知識・理解や技能、土台となる経験[学習履歴]の有無など))が、計画立案時の想定と一致していることも欠かせない条件です。 2017/12/15 公開の記事を再アッ…

新年度に向けた準備工程の進捗確認と計画調整

2月も中旬を迎え、入試業務や受験生指導などでご多忙を極める日々と存じますが、新年度を迎えるための準備も佳境に差し掛かっています。新しいことを始めるにしても、これまでのものに手を入れるにしても、残り8週ほどで計画を整えるためには、見落としがないかを確認し、このタイミングで「進捗の中間検証」を行うことが重要です。どんな指導でも、計画が設計通りに機能するかどうかは、対象たる生徒の実情と、計画時に想定した…

次に進んだときの学習をイメージ

各単元の学習目標は、当該学習内容を理解させることに加えて、学びのステージが次に進んだときに備えて、基礎的な理解や学びの方策などを身につけさせておくことにもあります。学習内容が高度化していく中で、学習方策の獲得が遅れて「生徒が個人の学習活動でできること」が相対的に減っていくようでは、教室でしかできない学びを充実させることもできなくなってしまいます。また、学びが進んでいくと、不明や躓きが起きる箇所も生…

評価の基準と機会を見直し~指導計画の起案前に

新年度に向け、指導計画の見直しが行われていることかと拝察します。現行課程の完成年度を経て、これまで進めてきた取り組みにも改善課題が見えているはず。反省を活かしてより良い指導を実現していくのは至極当然ですが、指導計画を更新する前にやるべきことがあります。先ずは「これまでの指導を振り返り、その成果(進捗)と反省点(改善課題)を的確に把握し直すべき」であるのは、先日の記事「指導計画の更新は、効果測定の結…

学ぶ理由/自立した学習者

1 学び続けられる生徒を育てる 1.1 自ら学び続けられる生徒を育てる ・学習方策の獲得はどこまで進んでいるか ・目的意識をもって学びに取り組んでいるか ・生徒の興味・関心をどこまで育めたか1.2 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養 ★ ・教科固有の知識・技能を学ぶ中で1.3 認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる ★ ・5教科7科目に挑ませることの意味1.4 学びに向かう力/主体的…