教育内容の充実を伝えるにはエビデンスを

どの学校も、建学の精神や教育理念を時代の変化に合わせて再解釈しながら、新たなチャレンジを重ねています。何を目指して、どう取り組むかを伝え、「理解と共感」を得て学校を「選択」してもらうには、 という2つの要件を満たすことが不可欠です。日々の教育活動を推し進めるに当たり、ゴールの確認(見失わないこと)と、日々の進捗と改善課題を常に捉える現況把握/効果測定を怠らないようにしましょう。 2018/05/1…

学校評価アンケート~質問設計を通して校是の共有

学校評価アンケートは、主だった学校行事が終わる年度後半での実施が普通ですが、どんな評価項目を立て、どんな質問文で訊くかはできるだけ早い時期に検討を進め、教職員への周知を図るべきです。生徒や保護者にYESと答えてもらいたい質問文は、学校が教育活動を通して実現を図るべきことがらに外ならず、質問設計を通した「目指すべき到達状態」の確認と共有は、目線のあった指導を容易にします。いざ、学校評価アンケートを行…

満たせるところに期待を集める~良好な関係作りのために

様々なところで「学校と生徒・保護者の関係が変化してきている」と言われ始めたのはずいぶん昔のこと。生徒や保護者からの要求(≒学校への期待)は、多様で、かつてより強いものになっていると感じます。こうした「膨らみ続ける要求や期待」に学校がどこまでも応えきるのは現実的には不可能。生徒・保護者からの要求とその出処である「学校への期待」の所在を上手くコントロールしないと、本来学校が果たすべき役割を遂行するの難…

自ら学ぶ力を獲得させるために~観察と評価

日々のご指導において、知識や技能、思考力、判断力、表現力を鍛え、獲得させるための「指導と評価」に抜かりはないところと拝察いたしますが、その一方で「学びに向かう力」については如何でしょうか。学びに向かう力を育み、主体的に学習に取り組む態度を評価することの目的は「生徒を学習者として自立させる」ことにほかなりません。卒業後も学び続け、より良く生きるのに必要な知識をアップデートし、それらを正しく生きて働か…

生徒による授業評価

1 授業評価アンケートで尋ねるべきこと(質問設計) 1.1 授業評価アンケートで尋ねるべきこと(質問設計) ・講義・座学系の授業評価項目・質問文 Updated! ・実習・実技系の授業評価項目・質問文 Updated! ・授業以外について尋ねておくべき生徒の意識 Updated! ・授業評価アンケートの質問設計~まとめと追記1.2 授業評価アンケートを行うときの最小要件(質問と集計)1.3 主体的…

授業評価の結果から(記事まとめ)

本年度も多くの学校から授業評価アンケートのご用命をいただきましたことに、この場を借りて、改めて心より御礼を申し上げたく存じます。1学期末に行ったアンケートのデータも揃い、解析を進めております。学習の主体たる生徒の皆さんが寄せてくれた回答は、きちんと整理して解析をすると実に様々なことを教えてくれ、実際に見た教室での風景と照らし合わせることで、授業改善に利用できる知見が得られます。以下は、各地の学校で…

既習内容の確認は、問い掛けで

新しい単元を学ばせるときには、関連する既習内容をきちんと理解しているか/覚えているかを確かめないと、どこまでを前提に学びを始めさせれば良いか見極めることができません。土台ができていないところに建材を組んでも上手くいくわけがありません。確かめるには、「問い掛けて生徒のアタマにあるものを言葉にさせる」のが最も効果的。もし、わからないこと/思い出せないことがあったとしても、以前に学んだときのノートや教科…

知識活用の機会を生徒が認識できないとき

以前の記事では、授業内外に「理解して覚えたことを課題解決に用いる場面を設けることが、学習目標の理解や学習を通じた成果(学力向上や自分の進歩の実感)を確かなものにする上、授業内活動を高めて対話的で主体的な深い学びの実現に近づく可能性をデータで示しました。しかしながら、理解したことを用いて解決する課題が授業内外に整えられているのに、生徒の側でそれを「知識活用の機会」として認識していないというケースが稀…

AIの時代だからこそ「問いを立てる力」

AIは、以前から身近なところでも活用されており、生活を便利にしてくれていますが、知的作業の道具(相棒?)としての存在感を強めたのは、ChatGPTの登場(2022年11月)を機にでしょう。以来、学習の場でも、生徒や学生が物事を調べたり、考えたりするのに使って当然、なくてはならない道具としての立場を手に入れました。こうした技術の進歩と道具の変化の中で、生徒や学生(に限らず、社会人も含むあらゆる立場の…

導入フェイズで仮の答えを作らせることの効果

別稿「導入フェイズの目的と方法」で書いた通りですが、学びを始めるタイミングで生徒に「本時の学習で目指すところ」を明確に認識させておくことには、様々なメリットがあります。頑張りに方向性が得られ、振り返りに基準を持てることに加え、ゴールと結びつけた情報(説明など)の理解と整理が、「知への構成」を容易にする(=理解力の底上げを図る)ことなどはその主なところです。目指すことの提示には、「(学び終えて)解く…

導入フェイズの目的と方法

授業の冒頭や新しい単元の学びに入るときに行う「導入」ですが、その目的をはっきり認識しておかないと、工夫して作り上げた方法が目的に適っているか/成果を挙げているか判断がつかなくなってしまいます。導入フェイズを終えたときに「達成しておくべき」ことを思いつくままに挙げてみると、次のようなところではないでしょうか。 2017/09/27 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 解くべき課題を示して、学習目…

新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

新課程への移行に伴い、パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ、学力観の更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉ひとつとっても、それが指すのは従来の「単元の内容を構成する、中心的…

学びの個別化と授業者に課される役割の変化

昨日(8月26日)の朝刊に、今春に本格導入となったデジタル教科書で教室に起きた変化を紹介する記事が載っていました。(デジタル教科書使うほど「主体的学習」に、授業が課題)生徒がそれぞれ自分のペースとやり方で勉強を進められ、学びの成果や過程を端末を通じてシェアできることは「主体的・対話的で深い学び」の実現を容易にすると同時に「学びの個別化」も加速していきます。最初の利点(自分のペースと方法)で、説明を…

改善が遅れた授業のキャッチアップを支える

授業評価アンケートの集計結果や、模試や外部検定のデータを拝見していると、改善を重ねてより良い指導を実現している授業/先生/クラスがある一方で、キャッチアップが必要なのに改善が遅れてしまうケースも少なからず見られます。これをそのままにしては、改善が進まない先生ご自身もお困りでしょうし、そこで学んでいる生徒にも小さからぬ不利益が及びます。自校に通うすべての生徒に「より良い学び」を約束するために、改善が…

学習方策の獲得、学習の改善~データと考察

学びへの目的意識~データと考察(その1、その2)と同じように、学習方策(科目の学び方や取り組み方の獲得)についても、直近に集まったデータを、教科×学年という切り口で集計し直してみました。以下がその結果です。学習内容が高度化していく中、「自分が身に付けている学び方」に自信を失っていくと考えれば説明がつきそうなデータです。どの教科も最終学年で跳ね上がるのには、そこまでに学び方が身につかなかった科目は履…

学びへの目的意識~データと考察(その2)

前稿(その1)でご紹介したデータを国社数理英の教科に分けて学年毎の集計値分布の推移を調べてみると、以下のような結果になりました。なお、グラフ中のブルーの破線は「教科別中央値」です。 (クリックで拡大) 予想通り、どの教科でも例外なく、「中間学年」は教科別中央値を下回っており、中弛みが観察されますが、その下がり具合や、最終学年での戻り方には、教科ごとの特徴のようなものも見て取れる気がします。また、ど…

学びへの目的意識~データと考察(その1)

当オフィス監修の「生徒による授業評価&生徒意識アンケート」では、伝達スキルや授業デザインに加えて、主体的な学びの実現度も推し量るべく、学習方策と目的意識について生徒の意識を質しています。 学ぼうとしても自力で学べるだけの術を身に付けていなければ、誰かが教えてくれるのを頼るしかない「依存」から抜け出せず、学ぶことへの自分の理由(課題や目的)がなければ、言われてやるだけの「受動」に止まります。いずれも…

夏季休業等のお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。 暦の上では「立秋」とのことですが、秋の気配とは歩ほど遠く、本日も当地の最高気温予想は33℃、熱中症も「厳重警戒」です。先生方におかれましては、夏の間もご多用のことと拝察いたしますが、くれぐれも御身大切にお過ごしください。 さて、夏季休業等のお知らせです。当オフィスは、8月9日(金)より17日(日)まで夏季休業といたします。ブログの更新は、明日から20日(火)までお休みし…

思考力と表現力を養うには

1 学力の三要素~思考力の捉え方もアップデート 1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました1.2 PISAが測ろうとしている「創造的思考力」 ★1.3 論理的思考と批判的思考 New!1.4 観察をタスクに「問題発見力」を育てる1.5 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」1.6 メタ認知、適応的学習力 ・失敗から正しく学べているか New! ・助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返って…

評価、効果測定・成果検証

1 効果測定を通じた教育資源の最適配分 1.1 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)1.2 働き方改革~校務の見直しと再構造化(記事まとめ)1.3 先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し Updated!1.4 学校経営計画の進捗を確かめ、達成可能性を高める Updated!1.5 優先的に取り組むべき課題をどうやって選び出すか1.6 選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づ…