思考力と表現力を養うには

生徒が立てた問いを起点に作り出す対話と学び

授業準備や導入フェイズの課題として「生徒に問いを立てさせる」ことや、教室でひと通りの学び終えたときに「質問を引き出す」ことの効果については、それぞれの記事でも触れた通りです。問いを立てさせるのも、質問を引き出すのも簡単なチャレンジではありませんが、「せっかく出てきた生徒の問いや質問をどう扱うか」にも、様々な工夫が考えられるところです。各地の先生方の取り組みと工夫を参考に、より良い方法を探していきた…

思考力と表現力を養うには

1 学力の三要素~思考力の捉え方もアップデート 1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました1.2 PISAが測ろうとしている「創造的思考力」 ★1.3 論理的思考と批判的思考 New!1.4 観察をタスクに「問題発見力」を育てる1.5 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」1.6 メタ認知、適応的学習力 ・失敗から正しく学べているか New! ・助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返って…

学びの深さ~どれだけ問いを重ねたか

学びや思考の深まりには、「結論を得るまでにどれだけの問いを重ねたか」というモノサシを当てることで測れる部分もあるように思えます。問いを立て、考え/調べ/話し合うたびに「なるほど、そうか」という気づきが生まれるもの。その積み重ねで生まれる「厚み」こそが、学びの「深さ」であると考えるのも、あながち的外れではなさそうです。習ったこと、教わったことを鵜呑みにして、覚え込んでいくだけの工程に「問い」は介在せ…

問いをテーマに授業を考える(まとめページ)

どんな問いを立てて授業をデザインするか(学習活動を配列するか)で生徒がそこで学べるもの/獲得できるものはまったく違ってきます。新課程への移行で学力観が大きく変わった今、 「生徒に何を問い、何を考えさせるか」 「授業の中で問いをどう使うか」 は、改めてじっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。こうした考え方に基づいてこれまでに起こしてきた拙稿を一覧にまとめてみました。お時間の許すときにご高…

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至るフェイズのすべてで、問いはそれぞれ…

非言語情報を言語化する力

与えられた資料から読み取った情報をもとに、思考を重ねた結果を言語化/表現する力は、今後ますます多くの場面で求められますが、資料は言語によるものだけに限りません。グラフ、データテーブルなどの数値をもとにしたものもあれば、イラストや地図なども含めた、ありとあらゆるタイプのものがその対象になりえます。各教科の教科書でも、本文以外のパートから得られる情報は膨大。それらを材料に、「非言語情報」を効果的にハン…

改めて考えてみる「問いを立てる」ということ

このブログでもたびたび「問いを立てる」という言葉を使ってきましたが、改めてその意味するところを考えてみたいと思います。単純に「なんだろう」「どうなっているのだろう」と疑問や興味を持つ段階から、「疑問の正体を特定し、共有可能な表現でその本質を表現する」という過程を経てようやく「問いを立てる/起こす」に至ります。目の前の事物を注意深く観察したり、資料などを注意深く読んだりしないと、起点の「なんだろう」…

AIの時代だからこそ「問いを立てる力」

AIは、以前から身近なところでも活用されており、生活を便利にしてくれていますが、知的作業の道具(相棒?)としての存在感を強めたのは、ChatGPTの登場(2022年11月)を機にでしょう。以来、学習の場でも、生徒や学生が物事を調べたり、考えたりするのに使って当然、なくてはならない道具としての立場を手に入れました。こうした技術の進歩と道具の変化の中で、生徒や学生(に限らず、社会人も含むあらゆる立場の…

導入フェイズで仮の答えを作らせることの効果

別稿「導入フェイズの目的と方法」で書いた通りですが、学びを始めるタイミングで生徒に「本時の学習で目指すところ」を明確に認識させておくことには、様々なメリットがあります。頑張りに方向性が得られ、振り返りに基準を持てることに加え、ゴールと結びつけた情報(説明など)の理解と整理が、「知への構成」を容易にする(=理解力の底上げを図る)ことなどはその主なところです。目指すことの提示には、「(学び終えて)解く…

意図したことを正しく表現する方法を学ばせる

思考力・判断力・表現力が重視され、主体的に学ぶ姿勢が求められるようになる中、生徒が自ら考えたことを発表する場面が増えてきました。 探究型学習の成果発表会などはその最たる例でしょうが、高大接続改革以降の入試では「証明する方法を説明する」「解決策を考え周囲の理解と共感を得る」といった言語活動の要素を含む問題が登場しています。意図したことを正しく表現するための土台は、日々の学習を通して獲得させた言語、情…

論理的思考と批判的思考

別稿「指導と評価の一体化~実現のための発想転換」で書いた通り、生徒の学力を伸ばすにも、評価(学習状況の改善[≒学力の向上]とそれを支える指導の改善を図るためのもの)を行うにも、伸ばしたい学力を構成要素レベルで明確にしておく必要があります。漠然とした捉え方をしていては、それらを発揮させる場としての課題や活動をきちんと選び出せませんし、評価の基準もブレてしまいます。学力の重要な部分をなす「思考力」にも…

失敗から正しく学べているか

昔から至るところで「失敗から学ぶ」という言葉を耳にしますし、口にもしますが、失敗から正しく学ぶには、相応の「失敗への向き合い方」を習得しておく必要があろうかと思います。教室での生徒の言動にそうした姿勢と行動がきちんと見て取れるか、注意を向けておきましょう。失敗をしたときに、きちんと振り返りを行い、その原因を見つけ出し、次の機会にどう修正して臨むかを考え出せれば、より大きな成功の確率が見込めますし、…

結論を出さずに終える授業

授業の終わりは「今日の授業の内容をまとめて」というのが定番のスタイルかもしれませんが、ちょっと発想を変えて、問いに答えを出さずに次の授業につなぐというやり方はいかがでしょうか。授業を「復習→導入→展開→演習→まとめ」という固定的な構成で考える必要はありません。結論を与えてしまうことで学びや思考を締め括らず、問いをオープンにしたままま授業を終えることが、生徒に考え続けさせることにつながることだってあ…

生徒に問いを立てさせる(続編)

前稿(本編)では、問いを立てることは教材に深く関わることであり、問いを立てることで学びは深く、広いものになると申し上げました。ジャンルやタイプを問わず、どんな文章/テクストでも、問いを立てながら読むことで書き手との対話が生まれます。グラフや図表のデータ、画像などの言語以外の方法で表現されたものも同じです。このようにメリットの多い「問いを立てる」というタスクには、教室で早いうちから取り組ませるべきだ…

PISAが測ろうとしている「創造的思考力」

先日の新聞(朝日2024年2月12日)に「AI時代、PISAが問うのはOECD・武内良樹事務次長に聞く」と題する記事がありました。ご存知の通り、PISA2022では、参加した81の国や地域の中で数学的リテラシー5位、科学リテラシー2位、読解力3位(OECDの37か国では数学と科学が1位、読解力が2位)という結果でした。順位が回復したことは好ましいことだろうと思いますが、PISAではこの3分野だけで…

大きな問いに挑ませるとき~問いの分割と準備の学習

与えられた問題が大きすぎて、どこから手を付けていいものやら見当もつかないときがあります。そのまま何の手立ても打たず、問題の加工もせずに教室に持ち込んで生徒に挑ませたとしたら、生徒の手と頭は止まったまま、貴重な時間を失います。下手をすれば「わからない、できない、手に負えない」という印象だけを残すことにもなりかねません。別稿「入試問題を授業の教材に使うときに」でも申し上げましたが、こうした場合、いくつ…

出題研究を通して"問い方"を学ぶ

獲得した知識や理解を活用して解決する課題を軸にした授業デザインを採ることで、「学習目標の把握」「授業内活動の充実」「理解確認の徹底」といった学習効果を高めるための必須要件の大半を効率よく整えることができるのは、別稿「知識活用の機会を整えて授業改善を加速」でデータを添えてお伝えした通りです。 2017/09/25 公開の記事を再アップデートしました。 ここで問題になるのが、どのような問いを用意して「…

アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を深…

対話が思考を育み、深い学びを実現する(まとめ)

新課程への移行を機に、「新しい学力観に沿った学ばせ方への転換」が急ピッチで進んできました。これまでの取り組みとその成果を検証して次フェイズに向けた新たな課題形成を図る動きも、各地に見られます。学校広報においても、これまで/これからの取り組みをただ並べて見せるだけの場合と、きちんと効果測定を行い、その中に見出された新たな課題に具体的な戦略を描いて取り組む姿勢をしっかりと伝えている場合とでは、学校に向…

正しい選択を重ねられる生徒に育てる

どんな場面でも生徒を指導をするときに最終的に目指すのは、「正しい選択を重ねられる生徒に育てる」ことだと思います。これは進路指導に限らず、生活や学習の場面についても言えることだと考えます。正しい選択が行えるようになるには、幾つかの要件を満たす必要がありますが、そのうち最たるものは以下のようなところでしょうか。 1では、必要な情報は何かを特定し、それを効果的に集める力(土台となるのは「読んだり、聞いた…