学ぶ理由/自立した学習者

生徒が自分で気づける機会を作る

教科学習指導において、科目に固有の知識や技能を獲得させようとする場合、一つひとつを丁寧に説明して理解させる、所謂「教える」というアプローチのほかに、問い掛けて考えさせたり/体験を再構成させたりする中で「生徒自身に気づかせる」というアプローチがあります。思考は一定の知識がなければ成立しませんので、「しっかりと教える」ことも指導者として逃れられない大切な責任/仕事ですが、生徒が自分で気づけるようにする…

リフレクション・ログから読み取る”評価者スキル”

評価者としての成長とは、「自分の取り組みとその成果を客観的に捉えて、進捗と改善課題を捉えた学びが自律的に行えるようになること」、別の言い方をするならば、「適切な振り返りができるようになること」を意味します。cf. メタ認知、適応的学習力成長(=評価者スキルの獲得)の痕跡は生徒が起こすリフレクション・ログにも表れるはず。「自分の取り組みとその成果をどれだけ客観的に捉え、より良いパフォーマンスを得るた…

行動選択の力を養う指導と評価~生徒意識(4)

生徒意識調査のQ09行動選択「進路のことや今何をするべきかを考えて行動できるようになった」に反映されているのは、教科学習以外の生活や進路などの領域にまで拡張されたメタ認知・適応的学習力でしょう。今の自分が置かれている状況を、少し先の未来に待ち受けるハードルや分岐に照らして理解し、何にどう取り組むべきかを考え出して、行動に移せる(さらに検証しながら修正していく)生徒を育てたいものです。 ❏ 学年ごと…

学ぶ理由/自立した学習者

1 学び続けられる生徒を育てる 1.1 自ら学び続けられる生徒を育てる ・学習方策の獲得はどこまで進んでいるか ・目的意識をもって学びに取り組んでいるか ・生徒の興味・関心をどこまで育めたか1.2 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養 ★ ・教科固有の知識・技能を学ぶ中で1.3 認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる ★ ・5教科7科目に挑ませることの意味1.4 学びに向かう力/主体的…

情報の整理・構造化のやり方を板書で学ばせる

情報を整理・構造化する方法は、先人たちによって様々なものが生み出されてきました。それらを活用する場面は、日々の教室にも豊富です。インデントや段落記号で階層性を表現したり、表組でものごとの対応性を捉えさせたりする板書に加え、教材のページには、フローチャート、ベン図、概念地図といった多様なダイヤグラムが方々に登場します。これらについて考え方を身につけておけば、複雑な情報を整理したり、整理した結果を他者…

認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる

前稿「5教科7科目に挑ませることの意味」では、学ぶ科目を早くから絞らせず広くしっかり学ばせることの主たる意味を、「認知の網を広く偏りなく張らせること」と「各科目の内容を学ぶことを手段に獲得した能力・資質を汎用性のより高いものにすること」の2つに求めました。生徒にとって多くの科目を学ぶのは負担に感じるところも大きく、「直接的な必要性がないと思える科目」の勉強はつい手を抜いてしまいがちです。担当の科目…

5教科7科目に挑ませることの意味

国立大を「一般選抜」で志す受験生は、原則として5教科7科目(25年からは「情報」が加わって6教科8科目)を勉強しなければなりませんが、それ以外の生徒(大学に進学しない生徒も含めて)にも出来るだけ多くの科目を最後までしっかり勉強してもらいたいと考えます。進路希望実現のための要件を満たすだけなら、必要最小限の科目に絞って勉強する方が「得点力向上のコストパフォーマンス」は高くなるかもしれませんが、ことは…

イノベーションをもたらす認知の網と偶然との出会い

新しく見聞きしたことを理解したり、そこに問題を発見したりするのは、もともと持っていた知識と新たな情報が接点を持ったということ。新たな情報が放り込まれたところの周辺に、既に蓄えられていた知識が待ち受けていないと、情報は接点を得ることなく素通りしていきます。既に知っていること/理解していることは、新しい情報を拾い上げるための「認知の網」として機能します。学びや体験の欠如で「網」が張られていない/穴が開…

改めて考えてみる「問いを立てる」ということ

このブログでもたびたび「問いを立てる」という言葉を使ってきましたが、改めてその意味するところを考えてみたいと思います。単純に「なんだろう」「どうなっているのだろう」と疑問や興味を持つ段階から、「疑問の正体を特定し、共有可能な表現でその本質を表現する」という過程を経てようやく「問いを立てる/起こす」に至ります。目の前の事物を注意深く観察したり、資料などを注意深く読んだりしないと、起点の「なんだろう」…

自ら学ぶ力を獲得させるために~観察と評価

日々のご指導において、知識や技能、思考力、判断力、表現力を鍛え、獲得させるための「指導と評価」に抜かりはないところと拝察いたしますが、その一方で「学びに向かう力」については如何でしょうか。学びに向かう力を育み、主体的に学習に取り組む態度を評価することの目的は「生徒を学習者として自立させる」ことにほかなりません。卒業後も学び続け、より良く生きるのに必要な知識をアップデートし、それらを正しく生きて働か…

学びの個別化と授業者に課される役割の変化

昨日(8月26日)の朝刊に、今春に本格導入となったデジタル教科書で教室に起きた変化を紹介する記事が載っていました。(デジタル教科書使うほど「主体的学習」に、授業が課題)生徒がそれぞれ自分のペースとやり方で勉強を進められ、学びの成果や過程を端末を通じてシェアできることは「主体的・対話的で深い学び」の実現を容易にすると同時に「学びの個別化」も加速していきます。最初の利点(自分のペースと方法)で、説明を…

学習方策の獲得、学習の改善~データと考察

学びへの目的意識~データと考察(その1、その2)と同じように、学習方策(科目の学び方や取り組み方の獲得)についても、直近に集まったデータを、教科×学年という切り口で集計し直してみました。以下がその結果です。学習内容が高度化していく中、「自分が身に付けている学び方」に自信を失っていくと考えれば説明がつきそうなデータです。どの教科も最終学年で跳ね上がるのには、そこまでに学び方が身につかなかった科目は履…

学びへの目的意識~データと考察(その2)

前稿(その1)でご紹介したデータを国社数理英の教科に分けて学年毎の集計値分布の推移を調べてみると、以下のような結果になりました。なお、グラフ中のブルーの破線は「教科別中央値」です。 (クリックで拡大) 予想通り、どの教科でも例外なく、「中間学年」は教科別中央値を下回っており、中弛みが観察されますが、その下がり具合や、最終学年での戻り方には、教科ごとの特徴のようなものも見て取れる気がします。また、ど…

学びへの目的意識~データと考察(その1)

当オフィス監修の「生徒による授業評価&生徒意識アンケート」では、伝達スキルや授業デザインに加えて、主体的な学びの実現度も推し量るべく、学習方策と目的意識について生徒の意識を質しています。 学ぼうとしても自力で学べるだけの術を身に付けていなければ、誰かが教えてくれるのを頼るしかない「依存」から抜け出せず、学ぶことへの自分の理由(課題や目的)がなければ、言われてやるだけの「受動」に止まります。いずれも…

模試の結果を正しく振り返る(学習行動の改善)

以前の記事「模試や考査の事後学習~間違え直しだけでは不十分」でも書きましたが、模試や考査の結果を戻すとき、所謂「間違い直し」に取り組ませるだけでは不十分。学習行動の十分な改善は期待できません。テストの結果を通じて振り返るべきは「これまでの自分の勉強への取り組み方や学習方法」であり、振り返りを行う目的は「より良いパフォーマンスを得るにはどのように行動すれば良いか」という自分の課題を見つけること。ひい…

説明がわかりにくいと言われたら

言うまでもなく、「説明や指示のわかりやすさ」は、授業の成否を左右する大切な要素です。先生の説明や指示、意図するところが十分に伝わっていなければ、生徒が課題解決や対話協働などの学習活動に取り組もうにも、その土台(=理解)は固まらず、目標の達成は見込めません。本時の「学習内容の理解」もままならず、如上の活動を通して狙っていた「能力や資質の獲得」も進まないのでは、学びが進むたびに、生徒が抱える不明や学習…

目的意識をもって学びに取り組んでいるか

自立的に学びを進められるだけの土台(学習方策)を備えることに加えて、学ぶ意欲や学ぶことへの自分の理由(目的意識)を持っていることは、主体的な学びを成立させるのに欠かせない前提条件です。前稿で考察した「学習方策」(この科目の学び方や取り組み方が身についた)に続き、本稿では目的意識に焦点を当てて、授業評価アンケートの回答データの解析結果が示唆するところをお伝えします。 2020/08/21 公開の記事…

学習方策の獲得はどこまで進んでいるか

新課程への移行を機に「主体的、対話的な深い学び」の実現が進んだと思いますが、検証の材料(授業評価アンケートや活動評価の結果に加えて、ポートフォリオの各種ログなど)を揃えて進捗を確かめましょう。その中で見つかった「好適実践」の共有も着実に図りたいところです。本稿と次稿では先ず、「主体的な」に焦点を当てて授業評価アンケートの回答データの解析と考察を試みます。主体的な学びは、生徒が学ぶ意欲や学ぶことへの…

科目を学ぶことへの目的意識/学ぶ理由

新しい学力観の下で実現を目指しているのは「主体的、対話的な深い学び」ですが、最初の要素である「主体的」であるためには、その科目を学ぶことへの「自分の理由」を持っていること前提の一つです。前稿で触れた「学習方策」が未獲得では学びは依存的なものにならざるを得ず、「学ぶ理由」がなければ受動的なものになってしまいます。振り返りを通じて見出した自分の課題(=次の機会での自分の目標)や解き明かしたい不明など(…

科目の学び方や取り組み方の獲得

主体的に学んでいると言えるには、生徒自身が「学ぶことへの自分の理由」を持っていることに加え、自ら学び進められるだけの学習方策を獲得している必要があります。誰かに教えてもらわなければ勉強が進められない状態はどこかで脱したいもの。自ら学び続けられる生徒を育てることは、数ある指導目標の中でも最も重要なものの一つです。■関連記事: 学習方策の獲得はどこまで進んでいるか【学習方策】 私は、この科目の学び方や…