学ぶ理由/自立した学習者

教え込むより、生徒に自力で学ばせる

知識・理解の形成を効率よく進めようとすると、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、「教える」という方法を選択しがちですが、それでは「自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力」を獲得する機会を生徒から奪ってしまいかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する、{指示と説明(=わかりやすさ)<学習効果}の授業、即ち「指示と説明…

"正解を言って欲しい"と言う生徒

生徒や学生にアンケートで授業の感想を尋ねてみると「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと混じります。先生方は意図をもって敢えて正解を示していないのが傍からも明らかな場合にもです。ここから窺えるのは「答えは与えられるものではなく、自ら作るもの」との発想を持ち合わせない生徒・学生が少なくないという問題です。以前なら、生徒が「正解」を求める相手は主に先生でした。しかしながら、AIに尋ねれば…

ノートを取らせて学習スキルを確かめる

同じ授業を受けていても、生徒のノートの取り方は実に様々。おざなりなノートの取り方に「復習するときにわかるのか?」と心配になることもあれば、先生の板書を綺麗に写し取るだけで、それ以外まったく書き込まれていない(=本人の思考の痕跡がない)ことも少なからずです。その一方、同じ教室にはしっかりと整理されたノートに、散在していた情報をきちんと集め、構造化している生徒もいたりします。同じ授業を受けていても、ど…

学ぶ理由/自立した学習者

1 学び続けられる生徒を育てる 2 学び方を身につけさせるための学習活動(学ばせ方) 3 学習者を自立に向かわせる授業デザイン 4 興味関心・学ぶことへの自分の理由 5 どんな人材を育てようとしているのか~教育目標 6 学習者としての成長を促す活動評価と振り返り 7 生徒に考えさせる学習行動・授業規律 8 進級、進学後の学びを見据えた準備 9 学ぶ理由/自立した学習者に関するその他の記事

何を目指して、授業/指導をデザインするのか?

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得への追記 漠然とした言い方になりますが、「先生方のお仕事が、何に対して責任を負うべきものなのか」という問いが、ときどき頭に浮かびます。上の記事を更新するときも、要所で立ち止まっては自問していました。生徒一人ひとりの「確かな学力の形成」はコミットすべきことの一つに間違いないでしょうが、「学力」の捉え方にも、幾つもの階層(=何を対象とするか、どこまで掘り下げ、拡張す…

教科固有の知識・技能を学ぶ中で

工業化社会では、正しい手順を正確に身につけ迅速に再現できることが生産性を高めることに直結しました。個々の教科の内容を学ぶ過程で発揮した「与えられた情報を素早く理解し、記憶する力」は、それ自体が武器となり、実際、テストの点数で「覚える力」の高さを証明すれば、次のステージへのパスポートが手に入りました。しかしながら、人工知能(AI)の進化などで社会構造が急激に変化していく、これからの「見通しにくい時代…

現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導

別稿「ゼロ学期を迎えるに当たり~指導計画作りへの下準備」では、新年度を迎えるために行う教員組織内の業務に焦点を当てましたが、もう一つ忘れてはいけないのが、進級を控える生徒(現2年、現1年)に対する「新年度に向けた準備を整えさせる指導」です。春を迎えて最上級生となる現2年生は、来年度の履修科目選択の希望を提出したことで「受験生」になる第一歩を踏み出したことになります。ここで歩を止めさせず、二歩め、三…

主体性の意味を正しく捉える

育成を目指すべき生徒像を描出するときに「主体性/的」という言葉がよく用いられます。教育目標の記述でも「主体性」や「主体的」の頻度は、かなりの上位にランクされるのではないかと思います。しかしながら、その意味をきちんと定義して使っているかと言えば、必ずしもそうとは言えないのが現実。話し手も、聞き手も、自分の経験や価値観に照らして言葉を解釈しますので、一つの言葉を、コミュニティのメンバーが似て非なるイメ…

質問に答えて不明を解消してあげる前にやるべきこと

生徒が問題演習を行ったり、実験や話し合いに取り組んでいたりするときに、先生方が机間指導を行いながら、生徒の質問に答えるシーンは、教室ではごく当たり前の、まさに日常でしょう。わからないことがあったら訊くようにと声をかけ、質問一つひとつに丁寧に答えていくのは、生徒の疑問や不明に向き合う指導者としての親身な姿に見えますが、よく考えてみると、「質問に丁寧に答える」という対処だけでは、十分ではないところも多…

メタ認知、適応的学習力

これまでの取り組みやその成果を振り返って、より良いパフォーマンスを得る/より良い自分に近づくのに何をすべきかを見出せるようになることは、持続的な成長にも、学習者としての自立にも欠かせません。21世紀型能力では、「思考力」を構成する要素のひとつに「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」が挙げられていますが、生活、学習、進路の各領域での教育活動を通…

振り返りと行動変容(まとめページ)

21世紀型能力(新課程の具体化に向けた議論の土台)における思考力の構成要素には、「問題解決・発見力・創造力」と「論理的・批判的思考力」に加えて、「メタ認知、適応的学習力」が挙げられています。各教科の学習に限れば、「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」と説明される力ですが、生活や進路などにも拡張すれば、広く「先に控える課題を見据えて、取るべき行…

学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる

生徒にとって新しい単元を学ぶのは、歩いたことのない道を歩き、訪ねたことのない目的地を目指すようなもの。歩き方にも色々とあります。以下の3つのシチュエーションを思い浮かべてみると、次のチャレンジでも的確にゴールに辿り着けるかには小さからぬ違いがありそうです。 同様の違いは「教室での学ばせ方」にもあるはず。学習する内容が同じでも、そこに至る方法(学びへのアプローチ)によって、身につくものや学びの質が大…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その2)

知識の獲得は、思考力や判断力の土台作りですので、どの教科を学ばせるときにも力を抜くことはできませんが、生徒自身が必要に応じて情報を集めて知に編めるようにすることも学習指導の重要な役割です。昨日の記事(その1)では、授業の導入フェイズや学び終えてからの知識拡充の場面で課すべき「手元にある教材から必要な情報を拾い上げ、知に編み、蓄えるタスク」をご紹介し、生徒が自力で知識を獲得できるように導く方法につい…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その1)

生徒に一定の知識や理解を獲得させようとするときに、昔から最もよく用いられているのは「話して聞かせてわからせる」という方法だと思いますが、それだけでは、相手(学習者)は自ら学ぶ力、知識を獲得するすべを身につけられません。教科固有の知識・理解を獲得させるときには、それらを獲得する方法を身につけられる学習活動に取り組ませるとともに、その成果を確かめていく(評価する)ことにも十分に意識を向けたいところです…

終盤まで伸び足を止めないために

模擬試験の成績や授業評価アンケートのデータを見ていると、2年生のときの大きな低下(あるいは停滞)を3年生の前半で大きく巻き返したと思ったのに、夏を越えて受験期を迎えた途端にパタッと伸び足が止まってしまうことがあります。(cf. 年度の後半で授業評価が下がる?)そうした問題が顕在化してからの対処では、十分な効果が得られないことも多く、有効な予防策が打てるかが問われるところです。また、夏を過ぎてからの…

学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"

生徒は各教科を学ぶ中で、教科固有の知識や理解を蓄えているだけではありません。学びへの姿勢や物事の学び方、課題を解決するための思考手順、協働場面でのふるまい方など、様々なものを身につけています。どんな能力や資質、姿勢を獲得させたいのか(ゴール)を明確にし、生徒一人ひとりが今、成長過程のどこにいるのか(現在位置)を掴まないことには、両者を結ぶプロセスである「指導」も計画できません。生徒自身もまた、段階…

振り返りはプロセスを分解して~失敗から正しく学ぶ

何かの問題を解いたとき、あるいは何かのタスクに挑んだときに、できた/できなかったという結果にだけ注目しているのでは、どこに間違いがあって成功しなかったか、原因への認識はあいまいになります。失敗の原因を見誤らず、同じ轍を踏まないためには、結果に至るプロセスをステップに分解した上で、振り返りを行うことが肝要です。成功も失敗も、振り返ってこそ、その先に生きる「智恵」になります。進捗と改善課題を捉えた学び…

評価基準は使いながらブラッシュアップ

必要な事柄を不足なく記述したシラバスであれば、学習者に熟読させることで、学びを通して目指すものを理解させ、意欲的に学ぶ姿勢を引き出す効果があります。cf. シラバスを熟読・活用させることの効果活動評価のための観点別評価基準、記述問題の採点ルーブリックなども同様であり、そこに書かれていること(規準)を、導入時や学びが少し進んだところで、生徒にしっかり読み込ませれば、目指すべき到達状態を正しく捉えた「…

やりきらずに放置してきたことを仕上げさせる

夏休みを迎える生徒に、今のうちに投げかけて考えさせておきたいことの一つは「1学期中にやり残してきたことはないか」です。夏休みは、やり残しに向き合い、きちんと仕上げ直す、かけがえのない機会です。英語の語彙増強(単熟語の暗記)といった単純なタスクも、先生が小テストまで行いペースを作ってくれたのに、十分に取り組めていなかったり、自分で立てた受験勉強の計画にも遅延が膨らんでいたりと、生徒一人ひとりに様々な…

高校生のタスク管理&スケジューリング

生徒にもやるべきことが山ほどあります。日々の勉強に加え、部活動や生徒会活動、家事や家業にアルバイトなど、タスクの多様さは社会人を上回るかもしれません。時間を効率的に使い、手持ちの時間の中にやるべきことをきちんと配列できるようになってもらいたいところです。多彩なタスクの中で、生徒が自分を成長させ、未来を拓く力を身につけていくのに必要なことを後回しにさせないよう、しっかりとタスク管理とスケジューリング…