フォーメーションは、意図的に且つ頻繁に更新

ペアワークやグループワークに取り組ませるとき、フォーメーションはどのくらいの頻度で、またどんな意図で変更しているでしょうか。生徒の組み合わせが固定してしまうことの悪影響は小さくありません。
仲の悪さで活動が阻害されるのも困りますが、仲の良い生徒とばかり組んでいても、「なあなあ」になってしまうかも…。多様な人々とコミュニティを形成し、そこで課題の解決に協働で取り組むときに必要になることを身につけるのが遅れる原因にもなりかねないように思います。

❏ メンバーが固定すると、その中での役割も固定する

生徒に限りませんが、関係性が固定した相手との間では、お互いが引き受ける役割も決まったものになりがちです。
21世紀型能力の「実践力」の構成要素には「社会参画力」が含まれますが、様々な相手とコミュニティを組み、その中できちんと役割を引き受けることができるのは、大切な「能力」のひとつです。
そうした能力を育むためには、ペアにしろグループにしろ、組み合わせ(フォーメーション)を頻繁に変更しながら、様々なタイプの相手との活動を経験させる必要があるのではないでしょうか。
組み合わせが頻繁に変更されるとなれば、嫌な相手/苦手な友達と組んでしまったときにも、「いつあるかわからない次の席替えまでひたすら我慢」というストレスを過度に抱えずにも済みそうです。

❏ 誰と組むかで学びの質も量も違ったものに

隣同士で意見を交わしたり、考えを共有させたりするときも、同じ相手とばかりでは、発想の広がりも限られてしまいます。
音読などの「練習」の場面でも、相互評価をしながら互いを高め合わせることができますが、下手な生徒同士で組ませているままでは、双方が上達のチャンスを逃してしまうのではないでしょうか。
グループワークにしても、その科目で抜きんでた知識量を持つ生徒が一人いると、その生徒の独壇場になってしまいがち。他の生徒は「聴衆」としての役割しか担わず、集団知の活用を学べません。
実験や実習の場でも、度を過ぎて場を仕切る生徒がいると、他の生徒は「お手伝いさん」になりがちですが、そこでは本来の/好ましい形での「フォロワーシップ」すら学べていないはずです。
いずれの場合も、ペア/グループの相手を変えてあげないと、あるところで学びがストップしてしまう可能性があるということです。

❏ 学習班は、科目ごとに違っても良いのでは?

授業内のペアワーク、グループワークはホームルームの席順をベースに隣の列と組んだり、近くで机を寄せ合ったりというのが多いかと。
これでは、クラスで席替えが行われるまで、ペアもグループもメンバーが固定してしまいます。
生徒の学力や興味の強さにも、教科・科目ごとに違うものがあるはずですが、それを考慮しないと、ペア/グループのパフォーマンスにも差が生じがちです。
となれば、グループの組み合わせなどは、各教科でそれぞれに考えていく必要もあるのではないでしょうか。
科目の得意・不得意(成績)だけでなく、調査や話し合いといった活動への取り組み方をどこまで身につけている(学習方策の獲得)まで考慮できれば、より好ましい組み合わせが実現できると思います。

❏ 授業とホームルームで見せる顔が違うことも

各教科を担当する先生方が、授業内での生徒の組み合わせを考えるときは、学級担任の先生からも情報を得るようにしたいところです。
ときには、生徒間のトラブルが生じており、しばらくは距離を取らせた方が良いと学級担任が判断しているときに、教科担当が不用意に生徒を組み合わせてしまうと、ことがややこしくなるかも。
また、生徒によっては、授業(各教科の学習活動)の中で見せる顔と、ホームルームや行事などで見せる顔が違うこともあります。
全生徒について情報をもらうのでは、教科担当も学級担任も大変ですから、「組み合わせに注意が必要な生徒はいる?」という聞き方での情報交換でも十分かと思います。



蛇足ながら、各教科での学びの場で見出された、生徒間の関係において「気になったところ」などは、学級担任にも申し送りをきちんと行い、ホームルームでの観察に注力してもらうことも大切かと思います。
活動の中でこそ、生徒は内面に持つものを外に示しますが、連絡事項の伝達がメインになる朝のホームルームでは、そういったものの観察はできません。
そもそも、クラス担任より教科担当の方が長い時間を教室で過ごしますので、観察のチャンスを多く持つのは後者です。そこで得た情報(生徒観察の結果)は、ホームルーム経営にも貴重な材料になるはずです。
繰り返しになりますが、生徒が見せる顔(行動や姿勢)は場面によっても違うもの。様々な場面での観察所見を持ち寄ることで、生徒理解はより深く、正確なものになるとお考え下さい。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一