以前お訪ねした学校で廊下を歩いていると、生徒会が作成した「学校新聞」の受験生向けの「号外」が掲示されているのが目に止まりました。
日々の学校生活を生徒の目線で切り取った記事は、校内のリアルな姿を描きだしており、どれも興味深く読めるものばかりでした。
お話を伺ってみると、学校説明会での来訪者にも配布しているそうですが、たいへんな好評を博しているとのこと。校外の方々の目にもふれることで、新聞づくりに一層の力が入っていることも想像できます。
2018/11/02 公開の記事をアップデートしました。
❏ 学校目線の広報/情報発信を補完するものとして
教育目的や教育活動の実際をきちんと伝えることの大切さは言うまでもありませんが、「学校広報」は基本的には広報業務を担当する教員組織が担うものであり、どうしても教員目線での切り口になります。
これに対して、生徒の手による学校新聞は、校内で日々を過ごす生徒の目線ですので、「公式」の学校広報とは違った切り口で、校内の様子や学校の魅力を伝えることができそうです。
受験生にとっては、その学校に自分が入学したらどんな風景が見えるかは、最大の関心事でしょう。
学校説明会では生徒による学校紹介(プレゼン)が組み込まれるケースも増えました。動画を公開して来場できなかった方にも見てもらう形も一般的になってきました。
これはこれで、とても良い取り組みだと思いますが、「新聞」という形に整えることにも、プレゼンとは違ったメリットがありそうです。
様々な立場から起こした記事を編むことで、学校の魅力を多面的に伝えつつ、一つの方向に向かって(方針を定めて)情報を編んでいくことでメッセージをより魅力的なものに作り上げることができるはずです。
❏ 情報を広く集め、編むことをミッションに持たせる
部活や生徒会が独自にアカウントを持ち、Twitter などで情報を発信しているケースも増えてきました。
自ら発信したい、つながりの場を創造したいという生徒の気持ちも大事にしたいところなので、それはそれで良いと思います。
しかしながら、団体ごとに発信への温度差もあれば、それぞれの思惑にも方向性が左右されます。個々の団体に任せてしまっては、学校が発信する情報としてまとまりに欠けたり、偏ったりする危険もあります。
新聞部や生徒会広報部といった生徒組織に、発信に加えて「編集」というミッションを担ってもらい、校内記者として活動してもらうようにしたいところです。
校内に散在する情報を集め、「学校の今の様子と魅力を伝える」という目的に照らした、情報の選択と組み合わせを考え、適切な表現を選ぶことに、力を発揮してもらいましょう。
❏ 生徒の活躍の様子を生徒自身の手でしっかり伝えさせる
生徒会の活動記録、部活動の様子や競技結果などは、取材、編集、発信を生徒に任せても良いかと思います。自由と権限を与えることで、発信意欲が刺激されますし、責任感も生まれます。
どんな情報を、どうやって集め、どのように方向づけてまとめていくかを議論しながら考え尽くしていく中では、新課程が求める学力(能力・資質)の獲得も期待できるのではないでしょうか。
入ってきた情報をただ並べるだけではなく、曖昧にされているところを掘り下げたり、それぞれが持つ意味を考えたりする過程で、そうした力を生徒は獲得していくはずです。
各委員会や部活動からの投稿を募るにしても、先生方からの「指示」よりも、生徒同士の呼びかけの方が反応が良さそうな気がします。
❏ 教員組織からも生徒による学校新聞に投稿を
しかしながら、生徒会や部活動のニュースばかりでは、学校の教育活動の様子と成果を十分に伝えることはできません。
生徒主体の行事にも、その設置には学校としての明確な教育意図があるはず。それを、別のところに切り離された形で伝えるのではなく、生徒が発信する情報と一体にしておく必要があるはずです。
校外活動や進路行事などの大きなイベントでは、業務担当の組織(分掌や学年団)の先生方から記事を寄稿するというのは如何でしょうか。
行事に込めた意図、それを経験する中で生徒に期待した成長(行動や考え方の変化)などを、先生方ご自身の言葉で伝えることも大切です。
大きな行事や特色ある教育活動では、生徒にポートフォリオへのログの記入を求めるでしょうから、そこから好適なものをピックアップして、生徒による学校新聞に「材料」として提供するのも良いかと。
生徒自身による振り返りの中に見られる「成長」は、他の生徒に対する刺激(相互啓発)にもなりますし、教育活動の成果を端的に伝えるものとして、生徒募集の広報でも最も重要な部分を担います。
学校新聞の年間発行計画を予め教えてもらって、それに合わせて投稿記事を用意すれば、うまく「紙面を分けてもらえる」はずです。
❏ 学校HPは公式アカウントで紹介して購読者を増やす
学校新聞が刊行されたら、学校のHPや公式アカウントで言及するとともにリンクを張り、校内外の読者(在校生、保護者、受験生とその周辺の方々、自校教職員、卒業生など)を誘導するようにしましょう。
せっかく作った学校新聞も、購読者が少なくてはガッカリです。たくさんの人に読んでもらえるからこそ、より良いものを作りたいという欲求も生まれます。
自分たちの活躍、ひいては学校の良さを知ってもらうことをミッションに、学校新聞づくりに取り組んでもらったなら、出来上がったものをより多くの人に知ってもらい、読んでもらえる状況を作ってあげるのは、学校が責任をもって取り組むべき仕事の一つだと思います。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一