11月1日に玉川学園で行われた、「21.5世紀探究型学習研究会」で勉強してまいりました。実践報告からは多くの刺激と学びを頂戴しました。また、京都大学大学院教育学研究科の楠見孝教授による「批判的試行を育む:探究学習スキル」と題する基調講演では、探究型学習について理解を深め、整理できただけでなく、たくさんの新たな可能性に気づかされました。
楠見孝先生の基調講演は、文科省のホームページにある「批判的思考について―これからの教育の方向性の提言―」にあるものに準じた内容です。私の拙い筆で誤ったことをお伝えしてはいけませんので、詳細はこちらをご覧いただきたく存じます。
汎用スキルの一部をなす批判的思考は、学習、市民生活、職業の実践を支えるものです。教科学習指導においてのみならず、進路指導・キャリア教育の場面でも、別の場面(総合学習、探究活動など)で養ったものを積極的に利用しなければなりません。
❏ 教科学習指導と探究活動(相互の成果を活かす体制へ)
シラバスの全面更新に当たり、各教科における「学年・学期ごとに目指す到達状態」の書き出しを行っている学校があります。その中の1校では、作業を進めるために用意した書式には、「フィールドワークでの学習との関連」(補足:学年を跨いで進めていく探究型学習)という欄が設けられていました。各段階における教科の学習を、学校全体で進める探究学習と結び付けることを、書式で規定するという工夫です。
同校のこれまでのシラバスには、他校での例にもれず、様々な記述が教科(もう少し言えば、学年教科)で閉じた内容・書き方になっていましたが、この取組を通じ、探究型学習で身につけた汎用スキルを、教科学習指導の場に利用する土台がますます整っていくものと思われます。
❏ 学習指導と進路指導を通じた批判的思考の養成
これとは逆に、教科学習指導や進路指導・キャリア教育が、汎用スキルを養う場面としても利用することも可能ですし、着実に行っていく必要があると考えます。
例えば、教科の宿題として課された夏休みの自由研究も、指導者側からの適切な指摘や生徒間で行う輪読&相互評価などを通じ、批判的思考のスキルを養うようにしなければなりません。
楠見先生のお話の中に、
批判的指導スキルを教えることによって、生徒は批判的思考ができるようになる
思考スキルだけを訓練するよりは具体的場面で教える方が効果が高い(文脈モデル)
― 他の領域に転移することを想定
― 各教科の教育、探究活動を通して教える
・スキル/知識(教科)の教育と問題解決行動の統合
とありました。直観とも一致しますし、各地での取組とその成果を見ても得心できるご指摘です。
具体的な方法については、研究会で発表された玉川学園の実践が、このたび書籍になって刊行されますので、是非ともご一読ください。目次を見ただけ、最初の数ページをめくっただけで、わくわくしてくる、明日から試してみたくなる内容です。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一