過日、ある高校を訪ね、「授業クリニック」を行ってきました。いくつかの授業を参観した後、授業をされた先生方とミーティングを持って、フィードバックを行うというものです。
ちなみに命名はお客様によるものです。名実一致の秀逸なものかと。
フィードバックでは、まず、参観した授業に見出された「優れた工夫」や「意欲的な取り組み」の共有を図ります。
優れた実践の所在を知れば、校内で行われているだけに、空き時間を使って参観に行くのも容易です。
また、ご自身の取り組みの優れた点を言語化を通じて客体化/理論化できれば、更なる工夫に向けた発想が広がります。「良い点のたな卸し」は定期的に行うべきだと、改めて実感しました。
当然ながら、問題点も指摘します。教える側で意図した行動が生徒の側に現れないなら、やはり進め方や働きかけに改めるべき点があります。
これを解消する方法を一緒に考える場として、参観を終えた直後に行う少人数でのミーティングは非常に有効でした。授業での手応えや自分なりの反省がホットなうちに行うのが肝心だと思います。
過日の参観でも、たくさん優れた点が見つかりました。同時に、少しの発想転換で大きく改善が図れそうな場面も少なくありません。いくつかをご紹介したいと思います。
❏ 問いを重ねて進めるスタイル
ある先生の授業では、「問いを重ねて進めるスタイル」が生徒の反応と集中を非常によく引き出していました。
問いを投げかけ数分の時間を与え(長すぎないことが、集中力を維持させるうえで大切なポイントです)、机間指導で状態を把握したうえで発言させていました。
もし、状況把握なしに出席番号などで指名していたら、あらぬ発言が返ってきたり、生徒が押し黙ってしまったりして、スムーズな展開が損なわれていたはずです。
❏ 板書を使った、「今、考えようとしていること」の共有
さらに、生徒の発言は、多少の間違いや不足を含んでいても、そのまま黒板に書き出しておられました。
やり取りを繰り返しながら、模範解答ができあがるまで板書しないのでは、何をやっているのかわからなくなる生徒も現れますし、やることがなくて退屈し出す生徒も出てきます。
未完の回答でも、それを板書することで、他の生徒にも「今、やろうとしていること、これから考えなければならないこと」が視覚を通じて無理なく共有されます。
口頭で伝えただけのときとはまったく違うレベルで、教室内の意識を揃えることができます。
黒板に書き出した生徒の発言に、本文からそのまま写しただけで意味が押さえられていない言葉(ちなみにこの授業は国語です)が含まれていたら、辞書で調べさせて脇に別色のチョークで添えるかたちで「開いた言葉」に書き換えて見せていました。
生徒の答えをもとに正解に近づけていくというアプローチです。教員が作った答えから逆算的に教材に関わるのとは全く違った学びが作り出されていたように感じます。
その2に続く
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
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