教え込むより、調べさせて気づかせる

教科固有の知識や理解を効率良く形成したい場面では、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、教えるという方法をつい選択しがちですが、それでは生徒が自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力を養う機会を奪ってしまうことになりかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する授業はごく少数であることから「指示や説明がわかりにくければ、学…

主体的・対話的で深い学びをデータから考える

主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、生徒が自ら(=主体的に)学びに取り組むための学習活動/アクティビティを用意し、課題解決に向けた協働の中での生徒同士の話し合い(対話)を増やすなど、先生方は日々の授業に工夫を重ねておられることと拝察いたします。そうした工夫を積み重ねる中でこそ、指導改善の成果は定期的に/しっかりと確かめていく必要があろうかと思います。生徒が対話に参加する場面をどれだけ作り出した…

学習効果に直結する活動性、それを支える視覚情報

授業内での活動性を高めることが学習効果の実感に直結することは、これまでの記事でもお伝えしてきましたが、一見したところ授業内活動とは何の関係もないように思える「わかりやすく整理された板書や資料」が、活動性の向上に大きく貢献していることを示すデータがあります。 2018/07/30 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 充足感のある授業内活動は学習効果に直結する 授業内の活動性を高め、それを通して生…

課題解決を伴わない知識獲得は… #INDEX

新課程におけるカリキュラムマネジメントでは、各単元の内容(コンテンツ)を学ばせることを手段に、21世紀の社会を生き抜くために必要な能力・資質(コンピテンシー)を育むという目的を達成していくとの発想を持つことが求められます。実際のカリキュラム編成や指導計画立案においては、各単元の学習内容を縦軸(行)に、育むべき能力・資質を横軸(列)に配したマトリクスを想定し、行と列の交点にある各セルに適切な学習活動…

課題解決を伴わない知識獲得は…(解決策考察編)

前稿で検証してみた通り、獲得した知識を用いた課題解決(=知識の活用)を体験する場を授業内外にきちんと整えておかないと、「わかりやすい説明」と「丁寧な確認」を通じて知識の獲得を確かなものにしても学力の向上をしっかり実感できる授業は実現しにくいようです。限りある授業時間を上手く配分して、知識の確実な獲得・体系化とそれらを生きて働くものとして活用する力(=思考力)を養うトレーニングとのバランスを取るため…

課題解決を伴わない知識獲得は…(データ検証編)

だいぶ古いお話で恐縮ですが、平成28年に文部科学大臣名で発信されたメッセージ「教育の強靭化に向けて」では、学ぶことがら(知識や技能)は減らさず、思考力・判断力・表現力をこれまで以上に鍛えるという方針が示されました。当時、「ただでさえ不足気味の授業時間の中で、教えるべきことをきちんと教えた上で、思考力・判断力・表現力を鍛える指導まではとても手が回らない」というご感想や戸惑いが多く聞かれたのを覚えてい…

理解確認と活用機会はバランスを取って

授業評価アンケートの結果をみると、理解確認と活用機会のバランスを欠く授業が少なくないことがわかります。下図は、授業評価アンケートをご利用いただいた学校でのデータで作成したものですが、理解確認と活用機会の双方が一定以上の水準に達している授業は全体の一部です。 2015/07/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 覚えることに偏らず、活用の前提もしっかり整える 理解確認と活用機会の双方を高い次…

理解の確認を怠ると…

授業評価アンケートなどで、「先生は、生徒の理解や状態を確かめながら授業を進めてくれていますか」と尋ねてみたときに、すべての生徒がYESと答えてくれる状態を維持することはとても大事なことですが、実現するのはそうそう簡単なことではなさそうです。実際のデータを見ると、下図の通り、肯定的な回答が9割を占める換算得点75ポイントに到達していない授業もかなりの割合を占めています。 2016/08/24 公開の…

新課程の枠組みで考える「知情意」

3年後に登場する新一万円紙幣に肖像が刻まれることになり、大河ドラマ「青天を衝け」も放送されるなど、渋沢栄一はちょっとした時の人になっています。この4月に放送された「100分 de 名著」を視聴したのをきっかけに「論語と算盤」(角川ソフィア文庫)を読んでみました。なかなか読みごたえのある一冊ですが、中でも第3章「常識と習慣」に触れられている「智情意」は、多くの学校で教育目標の記述に用いられており、考…

全教科でコミットすべき能力・資質の涵養

新課程の土台になった「21世紀型能力」で基礎力を構成する言語、数量、情報の各スキルは、すべての教科を学ぶ上での土台(=基礎)であると同時に、すべての教科の学び(教科固有の知識・理解を獲得する過程)を手段として、涵養を図るべきものだと思います。21世紀型能力の中核をなすのは「思考力」ですが、その主要な構成要素の一つである「問題解決・発見力・創造力」では、「問題」を見つけられないことがそもそもの問題。…

ノート指導、タスク管理

1 ノートにメモを取らせる指導 1.0 ノートにメモを取らせる指導(記事まとめ)1.1 ノートにメモを取らせる指導(その1)1.2 ノートにメモを取らせる指導(その2)1.3 ノートを取らせて学習スキルを確かめる 2 学習機会としての模試受験 2.0 学習機会としての模試受験(序)2.1 学習機会としての模試受験(その1)~仕上げさせる2.2 学習機会としての模試受験(その2)~計画させる2.3 …

振り返りを経てこそ次への課題形成

様々な学びを重ねる中で、より良いパフォーマンスを得る/目標の達成に近づくには、がむしゃらに頑張るだけでは足りないものがあるはず。根性だけの無策で壁に跳ね返されていては、頑張る意欲も維持できず、自信を失って対象に近づくことすら避けたくなってしまいそうです。これに対して、どこに力を入れ、何をすればよいのか、自分の課題が明確になれば、後は課題を一つひとつクリアしていくだけ。多少の遠回りや足踏みはあっても…

指導目標と指導方法が変わったら定期考査の問題も

教科学習指導に限ったことではありませんが、「目標とするところ」と「目標に到達するための方法や計画」の間には高い整合性が必要です。両者の間のズレを放置しては、目標が達成される見込みも立ちません。同時に、指導がどこまで成果を得たかを測定する評価方法も、学習目標にマッチしたものである必要があります。目標までの距離を正確に測れないことには、どうやって接近するか作戦も立てられないからです。新課程への移行で教…

答案を正しく評価できているか

別稿「学力観の変化は良問と悪問の分け方を変える」でも申し上げた通り、高大接続改革以降の入試で出題の増加が予想される「答えが一つに決まらない問題」などの新しいタイプの問題では、採点基準の在り方しだいで、設問は良問にも悪問にもなり得ます。答案を正しく評価することは、生徒の学びを正しい方向に導くことにほかなりません。新しい学力観に沿った出題が増える以上、それを正しく採点する方法の開発・確立は真っ先に取り…

本日のブログ、お休みします(パソコントラブルで)

おはようございます。 今朝、「さあ、今日も頑張るぞ」とパソコンを立ち上げて、メールを確認しようと思ったところ、本文の2行目以降が表示されないトラブル。 状況の確認と対処法の模索に、もたもた手こずっているうちに、今日のブログの記事を起こす時間がなくなってしまいました。(昨夜の内に書き上げとけば問題なかったのですが…。宿題は寝る前に終えないと。) そんなわけで、本日のブログ、お休みさせていただきます。…

分散登校/オンライン授業下での授業計画の見直し&修正

緊急事態宣言の延長と対象地域の拡大で、学校の授業にも影響が大きくなっています。分散登校とオンライン授業の併用で対応しているケースが多いようですが、通学時間をずらすための短縮授業なども行われる中で、授業を予定通りに進めるのは容易ならざるものと拝察いたします。 たとえオンライン環境が整っていても、画面を見ながら生徒が集中を維持できる時間は普段の授業より短くなりますし、アクティビティの切り替えやフォーメ…

指示を的確にこなす生徒~それだけで良いのか?

どの生徒のノートもしっかり板書を書き写しているし、予習も完璧に行われており答え合わせだけで十分。生徒を指名しても期待通りの答えがきっちり戻ってくる。一見すると「これまでの指導の成果」のように見えなくもありませんが、どこかに違和感を覚えます。もちろん、ちゃんとノートを取れない、予習もしない、答えさせれば的外れというのでは、これまでの指導のあり方を反省しなければならないでしょうが、指示を的確にこなす姿…

三度めの緊急事態宣言~分散登校、リモート学習への備え

東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に緊急事態宣言が発出されることになりますが、都立高校などでは分散登校を実施し、自宅でのオンライン授業と組み合わせて、通学する生徒を減らす方針とのこと。 期間が大型連休と重なるため、実質的に影響を受ける授業日数はそれほど多くならずに済むかもしれませんが、感染拡大が収まらず、他の地域にも緊急事態宣言の対象が広がっていく可能性も否定できません。 ここでもう一度、リモート指…

既卒生が残した「成果」を教材に~探究活動の導入指導

高校に入学してくる生徒は、小学校や中学校で横断的、体験的な「総合的な学習の時間」を経験してきていますが、高校で新たに取り組むのはその先にある「総合的な探究の時間」です。数学や情報の授業で新たに獲得する知識や技能なども駆使して課題の解決に取り組む中、これから自らが生きていく社会に自分がどう関わり、どんな接点を持ちえるのかを「探究」していくことになります。当然ながら、初めて挑戦する学びである以上、取り…

声に出して教科書を読むことの効能

ICTの導入が進む中で、個々の機器も技術の進歩でどんどん使い勝手が良くなっています。道具は上手に使えば、余計なところで浪費していたエネルギー(時間や手間)を目的に直結するところに集中して使えるようになるだけに、使い方を工夫し、積極的に活用したいところです。その一方、手を使って板書や資料を書き写すことや声に出して教科書を読むといった、特別な道具もいらなければ、やり方を改めて学ぶ必要もない「クラシカル…