遠隔授業のデータから考える対面の良さを生かすポイント
今年も幾つかの大学での本年度前期の授業評価アンケートのデータを分析する機会に恵まれました。今年はコロナ禍で対面授業ができず、前期を通してずっと遠隔授業が行われていたこともあり、項目間の相関など集計結果には例年と違ったものが方々に見て取れます。 対面授業が行われていた過年度と比べ、遠隔授業では以下のような変化が生じており、どうやら特定の大学だけの現象ではなさそうです。 教員の理解確認と学生の到達目標…
当オフィスは、各地の学校で授業力向上や教育改善・学校改革のお手伝いをしています。
今年も幾つかの大学での本年度前期の授業評価アンケートのデータを分析する機会に恵まれました。今年はコロナ禍で対面授業ができず、前期を通してずっと遠隔授業が行われていたこともあり、項目間の相関など集計結果には例年と違ったものが方々に見て取れます。 対面授業が行われていた過年度と比べ、遠隔授業では以下のような変化が生じており、どうやら特定の大学だけの現象ではなさそうです。 教員の理解確認と学生の到達目標…
所謂「アクティブラーニング的な要素を取り入れた授業」が広く行われるようになった学校で、生徒の平均学習時間が減っているというデータがありました。興味がわいて調査してみたところ、ひとつの学校の特異な事例ではありませんでした。自己評価や学習時間調査の方法は各校それぞれであり、また精度も良くない訊き方をしていることもあり、集計結果を鵜呑みにすることはできませんが、生徒が学びに主体的に関わろうとさせる中、実…
新しい学力観の下で、思考力を鍛えることの必要性への認識はますます高まってきています。なかなかすっきりした定義が難しい「思考力」ですが、「分析的な思考力」と「統合的な思考力」に大きく分けて考えるようにするとストンと落ちることが多いように思います。 分析的な思考力 与えられた問題を分析的に理解する力 統合的な思考力 複数の情報を統合して新しい考えに編む力 テクストを読んで理解したうえで、その中に問いを…
先日、拙稿「出題研究を通して”問い方”を学ぶ」を更新し、新しい学力観に沿った問い方を学ぶのに好適な教材を高大接続改革以降の大学入試問題から探しましょうとのご提案をいたしましたが、出題研究を通して各大学の教育姿勢を窺い知ることも同時にできるはずです。自教科の出題だけを見ても、大学全体での出題姿勢(アドミッション・ポリシー)やその背後にある教育観、教育姿勢までは掴み切れません。…
新課程への移行で、「各単元の学習内容をしっかり理解させ、知識として定着させた上で、且つ思考力や判断力、表現力も高める」という高い要求が教室に向けられます。これまで以上にやるべきことが増えるのは明白ながら、授業時間は基本的にこれまでと変わりません。この結果、当然ながら、「授業時間をいかに有効に使うか」がこれまで以上に重要な課題となりますが、解決のアプローチを何かひとつに求めたところで限界があるのは明…
お任せコースのみでやっているような料理屋さんもあれば、メニューが壁一面に「これでもか」と貼り出されている居酒屋さんもあります。後者タイプのお店では、何度も足を運んでその店のメニューを熟知すれば、その日の気分で大いに楽しめますが、そうなるまでは何を頼むかの判断も容易ではないのが悩ましいところ。ときには、並んだ品書きには久しく注文を受けていないものも混じっています。おかしな喩えから入りましたが、学校の…
新しい単元を学ぶ入り口では、生徒がこれまでの学習(教室の中に限らず生活を送る中でのもの)を通して、これから学ばせる内容/対象について何をどこまで知っているか/どんなイメージを持っているかを把握しておくことが大切です。生徒が既に知っていること/イメージしていることと、授業を経て形成させるべき十分で正しい理解との「差分」を埋めることこそが、本時の指導で達成すべき目標である以上、学びのスタートで生徒がど…
ものごとを理解するときは、それを単独で扱うよりも、生徒がある程度まで理解している何か対照となるものを引き合いに出し、互いの共通点と相違点を整理しながら学んだ方が、本質的なところ(意義や抱える課題など)を押さえやすくなることが多々あります。 ある時代・地域の政治制度を扱うときに現代日本のそれと照らし合わせたり、バイオームを学ぶ中、サバンナを既習のステップと比べたりするイメージです。共通項を押さえつつ…
生徒が問題演習を行ったり、実験や話し合いに取り組んでいたりするときに、先生方が机間指導をしながら生徒の質問に答えるシーンは日々の授業で頻繁に見かけるものです。わからないことがあったら訊くようにと声をかけ、出てきた質問のひとつひとつに丁寧に答えていくのは、親身になって生徒を指導している姿そのものにも見えますが、よくよく考えてみると、「質問に丁寧に答える」という対処だけでは様々な問題があるようにも思え…
工業化社会では、正しい手順を正確に身につけ迅速に再現できることが生産性を高めることに直結しました。個々の教科の内容を学ぶ過程で発揮した「与えられた情報を素早く理解し、記憶する力」は、それ自体が武器になり、実際、テストの点数で「覚える力」の高さを証明すれば、次のステージへのパスポートが手に入りました。しかしながら、人工知能(AI)の進化などで社会構造が急激に変化していく、これからの見通しにくい時代を…
先日、ある先生とのお話の中で、こんなご意見に触れました。───丁寧に教えてあげれば生徒は理解できるので、自分がその科目をできると誤解してしまう。進路を選んだ後になってからその科目に適性がないことに気付いたのでは、本来なら入れたはずの大学にも進めなくなる。丁寧に教えることが必ずしもよいこととは限らず、適性のなさに早めに気づかせ、ほかの進路を考えさせることも大切だ。───確かに適性のないところにしがみ…
1 授業再開にむけて整えておきたい準備 1.1 授業再開にむけて整えておきたい準備(記事まとめ) 1.2 休校明けの授業を円滑に再始動する ・まずは、家庭学習の成果をしっかり確認 ・確認テストを行うか、単元課題で評価するか ・教室で学ばせることを絞り込んで授業を再計画 ・遠隔指導やICT活用のノウハウを継続開発 1.3 改めて迎える「新年度」の始動に当たって押さえたいこと ・教員間の「目線合わせ」…
今年は年度当初から、臨時休校中のリモート学習、学校再開後の分散登校と様々な障害がある中での教育活動が余儀なくされましたが、1学期の授業評価アンケートの結果を見ると、評価が下がるどころか、大きく授業改善が進んだことを窺わせるデータも散見されます。 学習効果をダイレクトに尋ねる「授業を通しての学力の向上や自分の進歩を実感できるか」という問いにも、肯定的な回答が昨年度以上に増えているケースも少なくありま…