進路意識形成を支える指導

1 興味を追いかけ、しなやかに選択を重ねる 1.1 キャリアは選ぶものではなく重ねるもの ★ ・最短の進路がベストにあらず1.2 進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか ★1.3 自分事としての目標か~達成への行動を考える前に1.4 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり1.5 問いを立てる力~より良い社会を作るために New!1.6 カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思う…

このデータをどう読むか~教育のデジタル化

少し前になりますが、産経新聞のニュースサイトに「国期待のデジタル教科書 先進国で進むアナログ回帰 子供の学力低下への懸念背景に」という記事(令和7年度全国学力・学習状況調査の結果に基づくもの)が掲載されていました。以下のグラフはその記事からの転載です。  出典:産経新聞(2025年9月21日配信) 記事に添えられていた上のグラフを、素直に(深く考えずに)眺めていると「どの教科でも、授業以外の勉強で…

評価、効果測定・成果検証

1 効果測定を通じた教育資源の最適配分 1.1 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)1.2 働き方改革~校務の見直しと再構造化(記事まとめ)1.3 先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し1.4 学校経営計画の進捗を確かめ、達成可能性を高める1.5 優先的に取り組むべき課題をどうやって選び出すか1.6 年間指導計画の“中間検証”をどう行うか ・最初の定期考査を前に~中間検証と今…

新しい学力観に基づく評価方法(記事まとめ)

どんな道程を辿って目標に導くかは「地図」に相当するカリキュラムや指導計画に描き出されていたとしても、今どこにいるかを知るすべ(=評価)がなければ、この先をどう進めば良いか、判断がつきません。評価は「生徒の学習を改善し、成長させる」と同時に「指導の効果を測定する」ためのもの。適切な評価なしに、指導の改善はあり得ません。指導と評価の一体化を図ることはまさに急務。学びの多様な側面にきちんとモノサシを当て…

最初の答えと作り直した答えの差分=学びの成果

課題などに取り組ませるときには、その日の学び(調べる、話し合う、説明を聞くなど)を始めさせる前に、その時点で持ち合わせていた知識や発想で、生徒それぞれに「仮の答え」を作らせてみましょう。その後、ひと通りの学びを終えてから、改めて答えを作り直させてみると、仮の答えと作り直した答えの間に明らかな違い(差分)が生じているはず。言うまでもなく、両者の違いは「学びの成果」そのものです。最初に作った答えを消さ…

新しい評価の実行可能性を高めるための工夫

新しい学力観の下でのより良い授業の実現に向けて、様々な指導方法が試みられ、その成果が上がってきています。その一方で、その効果を確かめる「評価の方法」については、進捗がやや遅れ気味に思えます。学習の「結果」と「プロセス」について、「到達点」と「変化量」を視野に置いた評価を行う必要があるのは、別稿で申し上げた通りです。 学習評価を行うには、開発と運用の両フェイズで、小さからぬ手間と負担が生じます。それ…

どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

どんな問いを携えて教室に臨むか、授業の成否を分ける最大のポイントだと思います。拙稿「学習目標は解くべき課題で示す」でも申し上げた通り、「問い」は学習者にとって取り組むべき課題そのものです。問いのあり方について改めて考え、問いを軸に授業をどうデザインするか、発想とスキルを常にアップデートすることが求められています。 2018/12/20 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問いの立て方で、学ば…

学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる

生徒にとって新しい単元を学ぶのは、歩いたことのない道を歩き、訪ねたことのない目的地を目指すようなもの。歩き方にも色々とあります。以下の3つのシチュエーションを思い浮かべてみると、次のチャレンジでも的確にゴールに辿り着けるかには小さからぬ違いがありそうです。 同様の違いは「教室での学ばせ方」にもあるはず。学習する内容が同じでも、そこに至る方法(学びへのアプローチ)によって、身につくものや学びの質が大…

指導方法の効果測定 #INDEX

別稿「勘に頼らず、データに偏り過ぎず」でも書いた通り、新しい学力観に沿って学ばせ方の更新を測る必要がある中、新たに採り入れた手法はきちんと効果を測定し、成果を検証していく必要があります。次期学習指導要領に向けた改定議論が進む中、これまでに積み上げた指導や評価の工夫についても、どこまで狙いの効果を得ていたか、しっかりと点検を行わないと、進むべき方向も定まりません。 2015年12月に公開したシリーズ…

指導方法の効果測定#3 ポートフォリオの記録を利用

補習に参加した生徒としなかった生徒、ある課題に真剣に取り組んだ生徒と、仕上げ切ることなく形だけ整えて提出しただけの生徒。残念ではありますが、せっかく学習機会を整えても、有効に利用してくれた生徒とそうでない生徒とがいるのは常でしょう。これらの生徒を、効果測定において分けることなく一緒に扱い、集団としての成績や行動などの変化を見ても、指導がどのくらいの効果をあげたのか判断がつきません。両者を分けてデー…

指導方法の効果測定#2 定性的な指導目標の場合

教育活動(指導)の効果を測定すべきものには、目標が定性的に記述されるものも含まれます。協働性、多様性、主体性といった学力の第三要素に含まれるものなどはその典型でしょう。定性的な目標は、評価基準(観点別に記述した段階的な評価規準=ルーブリック)に書き出し、それに照らした評価結果の分布を捉えるなど、定量的に扱えるデータ(数値)に置き換える必要が出てきます。指導が有為な効果を上げているかを確認(=統計的…

指導方法の効果測定#1 平均値の変化だけでは…

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図ろうとするとき、最初に考えるべきは、「どのような方法で(指導方法)」ではなく、「何を目指して(指導目標)」であるのは、改めて申し上げるまでもありません。目標を定めた以上、それが達成されたかの検証も必要ですし、指導の方法を考えたら、その効果も測定しなければなりません。「どうやって目標の達成を検証(指導の効果を測定)するか」は、指導方法についてあれこれと議論を始…

効果測定は、理解者と賛同者を増やすため

以前の記事「 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)」 をお読みいただいた先生から、「効果測定や成果検証の必要性は十分にわかっているが、作業が増えることに負担感もあり、どうしても二の足を踏んでしまう」とのご感想を頂戴しました。確かに、指導の効果測定を行うには相応の手間がかかります。「足し算だけのビルド&ビルドから抜け出そう」との文脈なのに、そこに無駄な作業を新たに作るのでは、何を目指し…

次期学習指導要領にむけた論点整理を読んで

中央教育審議会の特別部会で「次期学習指導要領の論点整理案」が19日に大筋で了承されました。大きな動きで耳目を集めているのは各学校が授業のコマ数を増減しやすくする新制度「調整授業時数制度」です。ある教科のコマ数を削って、他教科に上乗せするという運用が想定されており、特色ある探究学習や教員研修の時間にも充てられるとのこと。具体的にどうなるかは、来春から全国(約300校)で実施されるモデル事業で出てくる…

単元で学んだことの体系化に挑ませる

どの科目でも、単元ごとに沢山のことを学びますが、それらを順番に覚えていくだけでは、単元の全体像を掴めなかったり、体系化されなかったりします。的確に整理され、自在に想起できる記憶は、体系的に物事を考える(物事を理解し、展開を予測する)ときの大切な土台です。まとめプリントを先生が作って配ってあげたとしても、生徒は「自力で知識を体系化する場面」を経験しておらず、その姿勢と方法を獲得する機会も持てずにいる…

生徒が問いを立てる授業(導入から仕上げまで)

昨日の記事「教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与」では、先生が用意した本時/単元の学びを俯瞰しうる問い(ターゲット設問)を軸に授業をデザインすることを提案しましたが、「問いを立てる」ことにも、学習者(生徒)を関わらせていきましょう。21世紀型能力の中核をなす「思考力」の構成要素には、問題発見力も含まれますので、観察をタスクに問題を見つけ出す力を育む場(指導と評価)を用意する必要があるのは言うま…

教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与

授業デザインを考えるときに最も重要なのは「どんな問いを立てるか」であると考えます。教科書という「食材」もそのままかじったのでは、美味しく調いません。そもそも、生のままではお腹をこわすかも…教科書に範囲を設けて適切な問いを立てれば、情報を集め、知に編むのにも軸が持て、調べる/考える/話し合うなどの行動も活性化します。さらにその「問い」が、生徒にとって自分事、答えを出すべき問題と認識できるものなら、「…

評価は「知識・技能」のみ?(次期学習指導要領)

次期学習指導要領に向けた検討の中で、評価の対象を「知識・技能」に絞るとの提案がなされたそうです。理由に挙がったのは「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」は、客観的な評価が難しく、教師や生徒に過度な負担をかけている、というもの。 確かに、学力の3要素のうち、2番目と3番目の基準が曖昧で、表現力の高い生徒が思考や判断の力まで高く評価されたり、教員の意図を汲んで「主体的に見える行動」をとる…

苦手意識が膨らんでしまったら(後編)

苦手意識が膨らんでしまった(=学びに自己効力感を持てなくなった)生徒には、様々な方法を組み合わせて「自信回復」に導く必要がありますが、確実に行うべきは、前編で触れた「既習内容の確認」でしょう。苦手意識を抱えるようになると、自ずと学びは消極的になり、これまで学んだ内容の理解も浅く、定着も不完全になっているもの。それを土台に次の学びを積み上げようとしても、不確かな足場に思い通りに歩を進められません。そ…

苦手意識が膨らんでしまったら(前編)

苦手意識を抱えている(科目学習への自己効力感に欠ける)場合、授業への消極的な取り組みを続けてきた結果として、これまでに学んできたことへの習熟が不十分になっているのは容易に想定されるところです。 そのまま単元を進めてしまっては、その後の学習目標をクリアしていくのは加速度的に難しくなり、問題は解決から遠のくばかりです。 実際に、授業評価アンケートの結果を見ていると、前学期/前年度に苦手意識が膨らんでい…