自ら課題を設定し、ブレずに歩める生徒を育てる

別稿「目標提示が苦手意識を抑制」では、先生方による目標提示(到達目標と取り組み方の明示)が、学習者が抱える苦手意識を抑え込む効果について、データを示しつつ、考えるところを整理してみました。本稿では、苦手意識を抱えさせない段階からもう一歩踏み込み、「自ら課題を設定しながら成長を重ねていける生徒を育む」ために、先生方を含む周囲の者がどう関わっていくべきか、考えてみたいと思います。生徒に限りませんが、昨…

目標提示が苦手意識を抑制

学習活動を通じて達成を目指すべきものと取り組みのポイントをしっかり示しておくと、苦手意識の発生が抑制されることが分かっています。授業評価アンケートのデータでは、目標理解という評価項目(学習目標や授業への取り組み方がはっきり示されている)で高い評価を得ている授業ほど、生徒の意識は「得意寄り」になる傾向が明らかです。また、意識姿勢(得意、苦手)という、あいまいになりがちな生徒の自己認識ではなく、「学習…

理解確認/学びの振り返り

1 理解度の確認~場面と方法 1.1 理解度の確認~場面と方法(序) その1)理解度の確認はなんのために行うのか Updated! その2)発問/問い掛けによる理解度の確認 Updated! その3)小テストによる理解度の確認 Updated! ・小テストをもっと効果的に(前後編) ・授業内に行う小テスト その4)提出された課題に目を通して行う確認 Updated! ・提出物は丁寧に添削して返すの…

部分理解と全体把握

人の話を聴いていて、目の前でなされている説明の一つひとつは理解できるのに、全体として何が言いたいのか、どこに向かおうとしているのか、どうにもピンとこない。こういった経験はないでしょうか。授業中の生徒も同様の経験をします。先生方の話す内容の一つひとつは理解できていても、今日の授業で何を目指しているのか、自分は今何を学んでいるのか、全体像を生徒が掴み切れていないことがあります。つまりは、説明の部分部分…

理解度の確認~場面と方法 #INDEX

ひと括りに「理解度の確認」とまとめてしまいがちですが、その方法は発問、小テスト、課題など様々。生徒同士の話し合いを観察するなどの方法もあります。方法それぞれに得手/不得手な領域があり、どれかに偏っているようでは、広く的確な理解確認は難しくなります。また、授業を進めるときのフェイズ(場面)ごとに、確認を行うことの目的も違います。それぞれの目的に合致した確認方法を正しく選択できるかどうかが、理解確認と…

理解度の確認~場面と方法(その4)~提出課題の点検で

本シリーズでは、理解度の確認について、目的とするところ、発問による理解度の確認、小テストによる確認と順に考えてきました。本稿では続いて「提出された課題を通して行う理解度の確認」を考えます。ここでいう「課題」とは、論述答案、レポート、調べたことをまとめたプレゼンシートなどを指します。発問や小テストが個々の項目の理解を測定するのに対し、より広い理解と深い思考を試すもの、単元やテーマの全体像をどれだけ捉…

理解度の確認~場面と方法(その3)~小テストの活用

前稿では「発問」を通じた理解度の確認方法について考えてみました。導入・展開・まとめのいずれの局面でも、発問という形態が持つ「反応の即時性」「対話への繋ぎやすさ」という強みを生かしたいところ。確認に頻用されるもう一つの形式は「小テスト」。よくある求答式や選択式の回答方式では、理解しているかより、覚えているかどうかに測定が偏りがちという弱みもありますが、一方で、正誤の結果や誤答の分布を定量化しやすく、…

理解度の確認~場面と方法(その2)~発問による確認

理解度を確認する方法には、発問、小テスト、課題等の提出物の点検、生徒同士のやり取りなどの観察といった様々なものがあります。それぞれの方法に長所・短所があり、用いるべき場面や上手に行うために押さえておくべき「勘所」も違います。まずは、発問/問い掛けによる理解度の確認から、場面を分けて効果的なやり方について考えます。 2014/05/23 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 新しい概念等を学ばせ…

理解度の確認~場面と方法(その1)~目的とするところ

理解度の確認は「次に進む準備が整っているかどうか」を確かめるために行うもの。もちろん、学んだことを覚えているか(=知識として保持されているか)も大事ですが、断片化した知識が記憶に残っているだけでは、理解したことにならず、次の学びの土台にはなり得ません。獲得した知識が生きて働いているかは、思考(課題解決など)の中で活用させてみて確かめる必要があります。「新しい単元を学ぶとき」「新たな概念を導入してそ…

評価、効果測定・成果検証

1 効果測定を通じた教育資源の最適配分 1.1 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)1.2 働き方改革~校務の見直しと再構造化(記事まとめ)1.3 先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し1.4 学校経営計画の進捗を確かめ、達成可能性を高める1.5 優先的に取り組むべき課題をどうやって選び出すか1.6 選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証 Updated! 2 データ…

言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」

学習における「振り返り」は、学びへの目的意識(主体的な取り組み)を引き出し、学習者としての自立に向かわせる上で欠かせないもの。しかしながら、振り返りという行為そのものが、メタ認知・適応的学習力(21世紀型能力における「思考力」の構成要素のひとつ)を用いる高度な知的活動であるため、何の準備指導もなしにやらせたところで、すべての生徒がきちんと/的確に行えるわけではありません。 的確な振り返りができるよ…

選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証

入学試験で志願者の合否を決めるときだけでなく、指定校推薦の内部選考、成果発表会の代表者選びなど、学校が「生徒の選考」を行う機会は実に様々ですが、もし選考の基準が妥当なものでなければ、 といった問題が生じやすいもの。しかしながら、教育活動の内容や方法についての議論に比べ、そこに参加させる段階でのフィルター(選考基準)の妥当性について議論がなされることは少ないように思います。選考が、公平性や透明性をも…

業務の無駄を省く~現場レベルで可能なコストカット

先生方の多忙は日常化しており、校務の削減と効率化は先送りできない課題の一つです。多忙の原因には、制度の更新を必要とする構造的なものと現場レベルでの仕事の進め方で解消を図り得るものとがあります。構造的な問題の改善を急がなければならないのは当然として、同時に、日々の教育活動に改善の余地がないかを洗い出し、ひとつひとつ片づけていきたいところです。制度変更で構造的な問題に解決の筋道がついたとしても、日々の…

予復習に課すタスクで”教室の学び”を最適化

教室でしかできない活動(課題解決に向けた協働など)の充実を図ることで、学びの実りはより大きくなります。授業評価アンケート(対象授業21074)のデータでも、学習効果を目的変数、活用機会と対話協働を説明変数とする重回帰分析の決定係数は0.698と大きな値を示します。この数字は、伝達スキルや、学びの準備と仕上げへの取り組ませ方などに改善課題を残している授業も含んでのもの。これらが改善し、且つ、生徒の学…

原因から考える家庭学習時間の延伸策 #INDEX

家庭学習は、新しい学力観の下、教室でしかできない学びの充実を図るためにも、しっかりとその習慣を形成したいものですが、指導を重ねても、容易には思った通りの成果(家庭学習時間の延伸)が出ません。授業外で個々に行う「学びの準備や仕上げ」に生徒が十分な取り組みを見せてくれないことの背景には、様々な理由があるはずです。その一つひとつに応じた、適切な対策を取ることで、成果に結びつけましょう。履行率を高めるべく…

家庭学習の習慣化を妨げるもの~原因から考える対処 #3

家庭学習の充実を妨げる「生徒が家庭学習に十分な取り組みを見せてくれない理由」を5つに大別し、その4つを前々稿、前稿の2回に分けて考えてきました。本稿は、最後に残った5番目、「家庭学習に取り組む喜びが見いだせない(達成や自分の進歩の実感なし)」を考えます。もしかしたら、家庭学習の延伸や習慣化にブレーキを掛けている最大の要因は、本稿で取り上げるものかも。家庭学習のタスクには、達成感を得たり、自分の進歩…

家庭学習の習慣化を妨げるもの~原因から考える対処 #2

家庭学習の習慣作りに向けて指導では、「なぜ家庭学習が根付かないのか」を考え、阻害要因を一つひとつ取り除いていく必要があります。前稿では、以下の5つを想定した上で、最初の2つについて考えてみました。引き続き、3番目以降の原因について考えていきたいと思います。1.やろうと思ってもできない(生徒側のレディネスが整っていない) 2.やるべきことが明確になっていない(指示が曖昧、具体性を欠く)   ───以…

家庭学習の習慣化を妨げるもの~原因から考える対処 #1

家庭学習の習慣の形成と維持は、程度の差こそあれ、どの学校でも課題にあがり、様々な対策が講じられてきましたが、成果が十分に上がっているケースばかりではなさそうです。お題目のように「一日あたり2時間の家庭学習!」を繰り返す声がけだけで、その目標をクリアできたとの話は聞いたことがありません。宿題を増やすことで学習時間の延伸を図るという戦略も、往々にして、こなしきれずに手を付けない生徒が増えるだけになりが…

課題の仕上げは個人のタスクに(後編)

授業内の様々な活動を通じて、課題解決に必要な材料(知識・理解、発想等)を揃えたら、学びの仕上げは「生徒が個々に取り組むタスク」に戻して完遂させるべきというのが、前編でお伝えしたことの主旨です。調べ、考え、話し合って押し広げた学びは、生徒一人ひとりが課題に立ち戻り、答えなどの形に仕上げ、その成果と過程を振り返る中で、深く確かなものになる(成果を固定できる)ということです。アウトプットを通じてインプッ…

課題の仕上げは個人のタスクに(前編)

学んだことを活用する(=知識や理解に生きて働く場を与える)課題を用意し、その解決に取り組ませることで、知識・技能や思考力等の能力のみならず、学びの姿勢や学習方策の獲得も進んでいきます。しかしながら、それが深く確かな学びに転じるかどうかは、課題解決や対話協働などに取り組んだ後の「学びの仕上げ」にどう取り組ませるか次第。「わかった」ところで学びを止めさせないようにしましょう。仕上げに取り組む中での「振…