月: 2024年10月

生徒が立てた問いを起点に作り出す対話と学び

授業準備や導入フェイズの課題として「生徒に問いを立てさせる」ことや、教室でひと通りの学び終えたときに「質問を引き出す」ことの効果については、それぞれの記事でも触れた通りです。問いを立てさせるのも、質問を引き出すのも簡単なチャレンジではありませんが、「せっかく出てきた生徒の問いや質問をどう扱うか」にも、様々な工夫が考えられるところです。各地の先生方の取り組みと工夫を参考に、より良い方法を探していきた…

生徒が自分で気づける機会を作る

教科学習指導において、科目に固有の知識や技能を獲得させようとする場合、一つひとつを丁寧に説明して理解させる、所謂「教える」というアプローチのほかに、問い掛けて考えさせたり/体験を再構成させたりする中で「生徒自身に気づかせる」というアプローチがあります。思考は一定の知識がなければ成立しませんので、「しっかりと教える」ことも指導者として逃れられない大切な責任/仕事ですが、生徒が自分で気づけるようにする…

探究的な学びの中でのビジネスプラン作り

総合的な探究の時間で「ビジネスプラン作り」に取り組ませるケースも少なくありません。社会課題の解決を図る中で新たなサービスや商品が生まれますが、探究とビジネスプランの親和性は元々が高いものです。以前の教育が、現状における社会の仕組みありきで、生徒をそれに適合させるプログラムだったとしたら、今の教育が目指すのは「社会課題を解決してどんな未来を創るか」を考え、行動できる人材の育成です。身の回りから人類の…

困りごとを相談する相手がいない生徒の特定と対処

生徒意識調査の質問7【相談相手】(困ったことや悩みがあるとき、信頼して相談できる相手がいる)で肯定的な回答を選べていない生徒は、トラブルに陥った時に事態を悪化させていくリスクや、周囲から受けたせっかくの刺激も上手に消化できないなどの不利を抱えます。如上の質問に対して、しっかりYESで答えた生徒以外には、何らかの対処、少なくとも「より詳しい状況の把握」が必要だと思います。 ❏ 但し書きなしの「積極的…

思考力と表現力を養うには

1 学力の三要素~思考力の捉え方もアップデート 1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました1.2 PISAが測ろうとしている「創造的思考力」 ★1.3 論理的思考と批判的思考 New!1.4 観察をタスクに「問題発見力」を育てる1.5 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」1.6 メタ認知、適応的学習力 ・失敗から正しく学べているか New! ・助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返って…

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 New! ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン (まとめページ)問いをテーマに授業を考える Updated!1.2 確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」 ★1.3 授業を通して21世紀型能力は育めているか ・資料を与えて読ませる/探さ…

リフレクション・ログから読み取る”評価者スキル”

評価者としての成長とは、「自分の取り組みとその成果を客観的に捉えて、進捗と改善課題を捉えた学びが自律的に行えるようになること」、別の言い方をするならば、「適切な振り返りができるようになること」を意味します。cf. メタ認知、適応的学習力成長(=評価者スキルの獲得)の痕跡は生徒が起こすリフレクション・ログにも表れるはず。「自分の取り組みとその成果をどれだけ客観的に捉え、より良いパフォーマンスを得るた…

ネットで検索した結果を鵜呑みにさせない

今や、世の中の大抵のことは、スマホで検索すれば即座に「それらしい情報」に行き当たり、「答えらしきもの」が簡単に得られます。たいへん便利な社会ですが、ネットに限らず世に飛び交う情報はまさに玉石混交。ときに悪意のフェイクすら入り混じります。鵜呑みにしては選択を誤り、不要なリスクを引き寄せることになります。先ずは耳目に入ってくる情報の真偽を確かめる必要がありますが、その姿勢と方法を学ばせる場もまた、生徒…

体験のたびに感じたことをしっかり考え、言語化&記録

日々の学校生活の中では、生徒は様々なことを感じたり気づいたりしていますが、それを漠然とした感想にとどめず、少し立ち止まって考えを深めさせるとともに、言語化し記録に残すことを習慣にさせましょう。先生方とのやり取りや周囲との会話、あるいは授業で読んだ資料など、生徒が受ける「成長のための刺激」は学校生活を送る中のあらゆる場面に存在していますが、それらをもとに熟慮する機会がなければ、気づきや学びは深まりま…

学びの深さ~どれだけ問いを重ねたか

学びや思考の深まりには、「結論を得るまでにどれだけの問いを重ねたか」というモノサシを当てることで測れる部分もあるように思えます。問いを立て、考え/調べ/話し合うたびに「なるほど、そうか」という気づきが生まれるもの。その積み重ねで生まれる「厚み」こそが、学びの「深さ」であると考えるのも、あながち的外れではなさそうです。習ったこと、教わったことを鵜呑みにして、覚え込んでいくだけの工程に「問い」は介在せ…

学級経営、生徒意識の把握

1 互いの学びを支え合う集団を作る 1.1 教科学習指導の土台はホームルーム経営 ★1.2 ホームルームの年間実施計画 ★1.3 互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ1.4 グループワークで作る学びへの積極姿勢1.5 生徒が互いの頑張りを支え合う集団作り Updated!1.6 進路意識の高揚を目的とした講演会の企画1.7 多様な生徒で構成する学びのコミュニティ ★ 2 環境整備、係の仕事、トッカツへ…

授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識”

言うまでもなく、教科学習指導の土台はホームルーム経営です。生徒が互いに刺激し合う(=相互啓発が働く)学びの場は、個々の生徒の学力や技能の向上を支え、学習を通じた成長/進歩を大きくします。 クラスが「成長の場」として機能するかどうかは、「係や当番の仕事」がどれだけ機能しているかや、担任の先生が「期待する行動」をきちんと打ち出しているかなどによって左右されることもわかっています。定期的にアンケートを取…

行動選択の力を養う指導と評価~生徒意識(4)

生徒意識調査のQ09行動選択「進路のことや今何をするべきかを考えて行動できるようになった」に反映されているのは、教科学習以外の生活や進路などの領域にまで拡張されたメタ認知・適応的学習力でしょう。今の自分が置かれている状況を、少し先の未来に待ち受けるハードルや分岐に照らして理解し、何にどう取り組むべきかを考え出して、行動に移せる(さらに検証しながら修正していく)生徒を育てたいものです。 ❏ 学年ごと…

好ましい”成長の場”を成立させる要件~生徒意識(3)

授業評価アンケートと同時に行うことを推奨させていただいている生徒意識調査(オプション)では、「生徒が互いに刺激し合い、ともに成長している」か(Q06成長の場)を生徒に尋ねて答えてもらっています。この項目は、授業評価における目的変数である「Ⅶ学習効果」との間で有意な正の相関が確認されており、最も重要な項目の一つと言えます。 (教科学習指導の土台はホームルーム経営より再掲) ❏ 好ましい学びの場(成長…

”期待する行動”を明確に打ち出す~生徒意識調査(2)

前稿「生徒意識調査の集計結果」でも書いた通り、「生徒に期待する行動」を明確に打ち出せているかどうかで、他項目の評価にも影響が及びます。特に「公平な指導」とは、後掲の通り、強い相関がみられます。期待する行動とは「生活、学習、進路の各場面ででどう行動すべきか、どうなって欲しいか」を指しますが、言い換えるなら、各領域における現時点(学年・学期)及び近い未来に達成すべき状態(目標)です。これらをしっかり共…

生徒意識調査の集計結果

当オフィス監修の「生徒による授業評価アンケート」ではホームルームの様子や自分の成長などについて、生徒の意識を質すアンケート(生徒意識調査)をオプションで行える仕様になっています。毎年、多くのデータが全国各地の学校から集まってきますが、「全国的にみると各項目の集計値(換算得点)の分布はどうなっているのか」とのお尋ねをいただくこともあり、改めて再集計を行ってみました。各評価項目の質問文については、以下…

問いをテーマに授業を考える(まとめページ)

どんな問いを立てて授業をデザインするか(学習活動を配列するか)で生徒がそこで学べるもの/獲得できるものはまったく違ってきます。新課程への移行で学力観が大きく変わった今、 「生徒に何を問い、何を考えさせるか」 「授業の中で問いをどう使うか」 は、改めてじっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。こうした考え方に基づいてこれまでに起こしてきた拙稿を一覧にまとめてみました。お時間の許すときにご高…

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至るフェイズのすべてで、問いはそれぞれ…

学ぶ理由/自立した学習者

1 学び続けられる生徒を育てる 1.1 自ら学び続けられる生徒を育てる ・学習方策の獲得はどこまで進んでいるか ・目的意識をもって学びに取り組んでいるか ・生徒の興味・関心をどこまで育めたか1.2 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養 ★ ・教科固有の知識・技能を学ぶ中で1.3 認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる ★ ・5教科7科目に挑ませることの意味1.4 学びに向かう力/主体的…

情報の整理・構造化のやり方を板書で学ばせる

情報を整理・構造化する方法は、先人たちによって様々なものが生み出されてきました。それらを活用する場面は、日々の教室にも豊富です。インデントや段落記号で階層性を表現したり、表組でものごとの対応性を捉えさせたりする板書に加え、教材のページには、フローチャート、ベン図、概念地図といった多様なダイヤグラムが方々に登場します。これらについて考え方を身につけておけば、複雑な情報を整理したり、整理した結果を他者…