提出物などの忘れものが減ったという報告は、手帳を導入した学校の大半で聞かれます。授業、ホームルーム、部活、委員会など、様々な場面からのタスクを一括で情報管理しておくことは、失念を防ぐのに効果的であることは容易に想像できます。
❏ 情報の一括管理が、忘れ物を減らす
たとえば宿題が出されたときに、科目ごとに作っている授業用のノートに書き留めても、予復習の習慣がない限り、宿題が出たことを覚えていなければノートを開くことはありませんよね。忘れていたことを思い出す方法として、根本的な矛盾を抱えています。
常に鞄に入れて持ち歩ける手帳に、用事のすべてを、時間軸に沿って組み換えて記録しておくことは、「見ることを忘れる」という事態を避けるためには最も合理的な方法です。
スマホやタブレットPCでも同じことはできますが、手帳の方が制約を受けにくいことは確かだと思います。校内でのスマホ・携帯の使用を制限している場合、その場で書き込むことは難しいですし、タブレットPCも手帳を開くのに比べれば起動に手間が掛かります。
❏ ホームルームでの連絡事項に漏れはないか
情報を一括管理することは、第一の目的である「忘れ物をしないこと、提出物の期限を守ること」の実現に寄与します。そもそもホームルームなどでの情報伝達に漏れがあってはおかしなことになってしまいます。
授業評価アンケートに付随して行う学級経営に関する調査では、残念なことに、「ホームルームを通じて連絡事項が漏れなく伝わっているか」という質問に対する否定的な回答が、なんと3割を超えるようなクラスも見つかります。
実際に教室を覗いてみると、生徒が騒がしくしているまま連絡事項の伝達を始めていたり、古い掲示物が残っている中に掲示を貼りだしたりしているケースもありました。これでは伝達が漏れるのも不思議ではありません。プリントを配っても、読み合わせもしないため、生徒は目を通すこともなく鞄にしまいこんでいます。
朝読書からそのままSHRに移行したり、手帳を開かせてから伝達を始めたりするなど、生徒に聞く態勢をとらせてから伝達を始めるようにしましょう。また、プリントを配布したら、ポイントだけでも読み合わせをして、手帳のスケジュール表に書き込ませるなどの習慣も効果を上げるはずです。
SHRの運営を、クラス担任ではなく生徒が輪番で行う試みもいくつかの学校で始まっています。ある学校ではMC(マスター・オブ・セレモニー:司会)と呼んでいます。当番が幾度か回ってくるうちに、最初は緊張→うまく行かなかったことで落ち込んで→次はこうしようという工夫が生まれて、という「成長」が観察されるばかりでなく、伝える側のことを思い遣ることができるようになって聴く態度も改善したとの報告も頂戴しました。
その3に続く
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一