ビジネス手帳を使って生徒の自己管理能力を高めようという取り組みが、広がりを見せています。当然ながら、使うのは先生ではなく生徒です。宿題や提出物の期限を書き込むことで忘れ物が減ったり、学習生活を振り返らせることで自律的な生活態度が養われたり、といった効果が報告されています。
首都圏の私立高校で実際に採用されているオリジナルの手帳(生産性手帳:学生ダイアリー)を拝見しました。普通のビジネス手帳と違うのは、学校の年間行事予定が組み込まれていることと、週間予定表などに「高校生にとっての自己管理」を意識した作りが見られることです。
たとえば、見開き2ページで印刷されている「週間予定表」には、学習時間を記録する欄や、その週の目標をあらかじめ書き込んでおいて1週間が終わったところで振り返りをさせる欄などが設けられています。
また、定期考査ごとに結果と反省点をまとめ、次のテストに向けた目標と決意を言葉にさせるページもあります。反省を踏まえた次への行動の決意表明をさせることは、同じ轍を踏ませないために欠かせない指導だと思います。
普通の手帳を使っても同じようなことは当然できます。しかしながら、慣れていない生徒は、何を書き込めば良いかもわかりません。はじめて手帳を使い、自己管理能力をこれから養っていこうという局面では、記入欄がきっちり設けられていることが一種のガイドとして役立っているはずです。
また、昔ながらの常時携帯を前提にしたポケットサイズの小さな手帳に比べて、判型の大きなビジネス手帳は、設計の自由度も高く使い方には様々な可能性を秘めていそうです。
❏ 中学生、高校生にとっての自己管理とは?
そもそも、中学生や高校生にとっての自己管理とは何でしょうか。まずは思いつくままに書き出してみると、こんなところでしょうか。
- 忘れ物をしないこと、提出物の期限を守ること
- 予定を立てて、計画的に行動できること
- 3ヵ月先、半年先を見据えて、今なすべきことを考えること
- 反省を踏まえて、次の行動を正しく選択できること
ビジネスマンに求められるスケジューリングでは、会議や打ち合わせなど関係者との連携や、マルチスレッドで展開していく業務の進捗管理、予定変更に伴う更新などが、効率的な手帳作りのポイントになりますが、生徒の場合は似て非なる部分も少なくなさそうです。
社会人向けの手帳活用術などのマニュアル本などは山ほど出版されていますが、そこに書かれたことをそのまま倣っても、所期の目標に近づいていくのは難しいかもしれません。中学生、高校生が身につけるべき自己管理とは何かをしっかり考えてから、手帳の使い方を考えていく必要があります。
その2に続く
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一