授業クリニックの現場から(その3)

これまでにも、方々の学校をお訪ねして授業を参観させていただきました。その中で、多くの場合に共通する問題も見られます。併せてご参考になればと思い、追記して残しておきたいと思います。

❏ 既にわかっていることに時間をかけ過ぎない

どの学校でも、しばしば見かけることですが、生徒が既にできるようになっていること/わかっているところに時間をかけ過ぎていると感じるケースがあります。
前年度までに生徒が学んだこと、高校では中学での、中学では小学校での学びをもう少し知っておく必要があると感じます。
入試での設問別正答率を把握しておくほか、校種間連携での授業参観機会を利用するなど、採るべき方法はいくつもあります。
また、日ごろの授業でもできることはたくさんあります。既習事項についての事前小テストを行ったり、宿題を前もって回収し目を通したりすることで、始業時点での知識・理解の状況の把握に努めるようにしましょう。
生徒の側で知識・理解が揃っているところはできるだけ軽く扱うことがポイントです。
ある学校で授業を参観させていただいたときに生徒の手元をのぞいてみたら、授業終了後に提出することになっているプリントに、ほとんどすべての生徒が既に正解を書き込めていました。
1年生の授業ですから、入学前から十分に理解できていたのでしょう。その部分を授業中の長い時間をかけて説明しても生徒は退屈するばかりで、肝心な活動やアウトプットにかける時間も失います。

❏ 音読などの練習場面にも目的意識を明確に

英語では、テクストを音読させたり、重要な例文をリピートさせる場面が多く見られます。
しかしながら、間違った発音で練習を重ねたら、へんな癖がつくだけです。実技要素を含むケースでは教科の違いに関係なく生じる問題です。チェックポイントを明示し、正しい練習を積ませる必要があります。
そもそも声を出していない生徒がいるのを「元気がない」で済ませてはいけません。
ある学校では、発音上のポイントをあらかじめ示し(特に大事なところは板書も)、ペアで互いにチェックし合うようにさせていました。
互いにチェックし合う以上、集団の中の一人に埋もれて(相手に声が聞こえない)いるわけにはいきません。声は自ずと大きくなってきます。
最初のうちは、指示に手間取るかもしれませんが、幾度も繰り返すうちに、生徒の側で手順を覚えてしまい、「ペアでチェック!」という指示だけでスムーズに進むようになるはずです。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一